人が倒れた! 救急車の到着まで何分? 遅いのはなぜ

日経Gooday

正解は、(3)約8分半(8.6分)です。

ただ待つだけでは手遅れに

目の前で人が突然倒れてしまった、そんな場面に遭遇すれば、誰でも「早く救急車を呼ばなければ」と思うでしょう。しかし現在、救急車の到着までにかかる時間は平均8.6分。20年前に比べると、2分半も遅くなっています(図1)。

現場に到着するまでに要する時間、病院に収容されるまでに要する時間は、20年前に比べて長くなっている。(出典:総務省消防庁「平成30年版 救急・救助の現況」)

「現場到着までの時間が延びている理由は、重症でないにもかかわらず、救急車を呼んでしまう人が多いからです。例えば、軽度の熱中症で救急車を呼ぶ人が増えれば、その地域の管轄の救急車が出払ってしまい、別の地域から出動することになり、時間がかかります。今後、救急車の到着時間が長くなることはあっても、早まることはないと考えたほうがいいでしょう」。長年、突然死に向き合ってきた日本AED財団理事長の三田村秀雄さん(国家公務員共済組合連合会立川病院病院長)は、厳しい現実を語ります。

救急車の到着を待つ間、居合わせた人がただ見守っているだけでは、命が助からない可能性もあります。「一過性の失神であれば、30秒以内に意識が回復します。もし倒れて30秒以上意識が戻らないときは、そのままでは突然死してしまう危険が高いと判断してください」(三田村さん)。

そんな緊迫した状況で、命を救うために素人でもできることは何でしょうか。「119番に通報したら、すぐに電話を切らず、救急車が来るまでどうすればいいか、受話器越しに対応法を教えてもらってください。気が動転するかもしれませんが、必要なことはすべて電話の向こうの担当者が教えてくれます。安心して指示に従ってください」と三田村さんは話す。

基本は「心臓マッサージ+AED」

呼びかけても反応がなく、呼吸も止まっている人に対する救命処置としてよく知られているのは、マウス・トゥ・マウスで行う「人工呼吸」と、胸骨を圧迫する「心臓マッサージ(胸骨圧迫)」です。現在は、「救急車到着前の人工呼吸は省略してもよく、心臓マッサージを切れ目なく行うことを重視する」というのが、心肺蘇生の専門家の間でのコンセンサスになっています。

「人工呼吸に気を取られると心臓マッサージがおろそかになることもあり、これは絶対に避けねばなりません。救急車が到着するまでの8分半、いかに命をつなぐかを考えると、最優先すべきは心臓マッサージなのです」(三田村さん)

心臓マッサージの基本は、手のひらの付け根を倒れている人の胸骨(胸の中央の骨)に当て、両手を重ねて、5~6cm沈む程度の強さで、一定のリズムで休まず押し続けること。押すときのペースは、1分間に100~120回。といっても分かりにくいので、童謡の「うさぎとかめ」(もしもしかめよ…)、手まり歌の「あんたがたどこさ」などの曲のテンポをイメージして押すといいとされています。

もし、自分以外にも現場に居合わせた人がいたら、心臓マッサージを行いながら、別の人がAED(自動体外式除細動器)を取りに走るのがベストな選択です。突然死の多くを占める心臓突然死では、心室がブルブル震えて全身に血液を送れなくなる「心室細動」が起こり、心停止に陥ってしまいます。そんなとき、心臓マッサージに続いて絶大な効果を発揮するのがAEDなのです。

目撃者がいる場面で心臓が原因の心停止を起こした人の救命率は、119番通報だけで何もしなければ9.3%、心臓マッサージなどの蘇生術を行っても16.4%にとどまりますが、AEDを使った場合は53.3%に跳ね上がります。その後の社会復帰率が高いことも、AEDならではの大きな利点です。

「人の心臓にショックを与えるのは怖い」とためらう人もいるかもしれませんが、「電気ショックが必要かどうかはAEDが自動解析してくれます。すべて自動音声に従って行動するだけなので、安心してください」と三田村さんは話す。今やAEDは、主要な駅や学校のほか、各種公共施設、ショッピングセンター、スポーツ施設など、街のあちこちに設置されています。日ごろの行動範囲の中で、どの場所にAEDが設置されているのかを知っておけば、いざというときに体が動き、誰かを突然死から救うことにつながるかもしれません。

(日経Gooday編集部)

[日経Gooday2019年9月17日付記事を再構成]