愛らしいカモノハシが急減 初の本格調査で判明

日経ナショナル ジオグラフィック社

一方で、歴史的文献の記述はあてにならず、過去の個体数について何かを主張するための根拠にはならないと考える研究者もいる。カモノハシの目撃報告が少ないからといって、その地域で本当に個体数が少ないのかどうかは、もっとしっかりとした調査が必要というのだ。

ビノ氏も、多様なデータの折り合いをつけることの難しさは認めている。だが、研究チームの目的は、カモノハシの厳密な減少数を出すことにはないと強調する。

「昔の観察記録は、たとえ体系的な調査の結果でなくても、報告する価値と意義があります」と彼は言う。特に今回のような場合、こうした研究により「知識の重大な欠落が浮かび上がってくる」からだ。

カモノハシの不確かな未来

いずれにせよ、専門家の見解はカモノハシが苦しい状況にあり、このままいけば衰退の一途をたどるという点では基本的に一致している。

オーストラリアのマクマホン・クリークに仕掛けた網からカモノハシをはずす研究者のジョシュア・グリフィス氏(左)と助手のサミュエル・ベル氏。カモノハシの身体測定を行い、マイクロチップをチェックして、すぐに水に戻す(PHOTOGRAPH BY DOUGLAS GIMESY)

例えばホーク氏らは、大規模なダムがカモノハシに及ぼす影響を調べている。彼らの予備的な調査データによると、川の1カ所にダムが建設されると、その上流と下流でカモノハシが全滅する恐れがあるという。

研究者は、カモノハシに迫るこうした脅威を理解することで、カモノハシを保護する最善の方法を突き止めることができると考えている。

「カモノハシは1億6000万年の進化を経て、オーストラリア東部の河川にすむ動物のアイコン的存在になりました。カモノハシはこの科(カモノハシ科)の最後の現存種です。今後も保護していくことができるのか、科学者はみんな心配しています」と、カモノハシ研究者であるピーター・テンプル=スミス氏は話す。

奇妙なカモノハシを愛するのは科学者だけではない。

「オーストラリア人なら誰でも野生のカモノハシに出くわした経験をもっています」とプレストン氏は言う。「彼らがその経験について語るとき、ぱっと明るい雰囲気になります。残念ながら、そうした経験のある子どもはどんどん少なくなっています」

(文 Christie Wilcox、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年9月3日付]

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