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宇宙飛行士・山崎直子さん 元空挺隊員の父が質問攻め

2019/9/20 日本経済新聞 夕刊

1970年千葉県松戸市生まれ。2010年、日本人女性2人目の宇宙飛行士としてスペースシャトル・ディスカバリーに搭乗。現在は内閣府宇宙政策委員会委員などとして教育に力を注ぐ。

著名人が両親から学んだことや思い出などを語る「それでも親子」。今回は宇宙飛行士の山崎直子さんだ。

――宇宙飛行士になることについて、ご両親はどんな反応でしたか。

「2回目の受験で宇宙飛行士に選抜されたのですが、1回目のときは受験後に伝えたこともあって、怒っていました。何の相談もなかったことがさみしかったのかもしれません。もう一度挑戦したい。私の思いを父、母ともに受け入れてくれました。合格を報告すると母は『あっそう、よかったね』の素っ気ない一言。でも、うれしさの裏返しだとすぐにわかりました」

――どんな英才教育を受けて育ったのですか。

「普通の家庭ですよ。自衛官だった父はいつも背筋がピィーンとして剣道や柔道の有段者。ちょっと怖い感じでしたけど。母は専業主婦で、天真爛漫(らんまん)を絵に描いたような女性です。このバランスが心地よかったです」

「勉強についてはノータッチでしたが、私が興味を示すものについては、新聞の切り抜きや書籍、博物館の展示会など可能な限りの情報を与えてくれました。成果を求めるのではなく、好奇心を満たす材料を与え続ける。宇宙に行きたいという夢を持ち続けられたのは、両親の子育て方法のおかげです」

――宇宙に興味を持つきっかけは何でしたか。

「テレビのアニメ番組のチャンネル争いで、いつも兄に負けていたんです。それで見た『宇宙戦艦ヤマト』や『銀河鉄道999』に感化されたのかなぁ。私が勝っていたら『アルプスの少女ハイジ』だったので、大自然に憧れていたかもしれませんね」

「父の転勤で幼稚園から小学2年生まで札幌で過ごしました。星を見るイベントに参加して、天体望遠鏡をのぞくと、月のクレーターや土星の輪がすぐそこにあったんです。宇宙に行きたい。感動が夢になりました」

――宇宙飛行士の仕事について話すことはありますか。

「父は陸自の第1空挺(くうてい)団の出身。飛行機やヘリからパラシュート降下する隊員です。重装備の体で、狭い機内で正確に無駄なく行動するのは、宇宙飛行士と通じるのかもしれません。質問攻めにあったり、助言に似たようなことを言われたり……。不思議な感じです」

――ご自身も結婚されて子育てするようになりました。

「宇宙飛行士に選ばれてからスペースシャトルに搭乗するまで11年。結婚、出産、子育てと訓練を重ねる生活は平たんではなかったです。ただ、つらいとは思いませんでした。新しいことは楽しんじゃう。もちろん、両親や家族の支えなしでは不可能です」

「両親とは形が違うかもしれませんが、2人の娘が夢に突き進むための安心感を与え続けたいと思っています。私の次の目標は宇宙旅行に行くこと。娘たちもいっしょに来てくれるかなぁ」

[日本経済新聞夕刊2019年9月17日付]

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