池田理代子さん 「ベルばら」オスカルはなぜ女性に編集委員 小林明

作画もコマ割りも見よう見まね、貸本で修行重ねる

――下積みもせずにいきなり漫画を描けるものですか。

「作画もコマ割りも、見よう見まねでしたね。水野英子先生(トキワ荘に居住した紅一点の女性漫画家)などの作品のタッチには大きな影響を受けました。そして数カ月かけて64ページもの長編を描き、新人のくせに集英社の『マーガレット』や講談社の『少女フレンド』に作品を持ち込んだんです。当然、けんもほろろに突き返されますが、講談社の方から『才能があるかもしれない』と貸本専門の出版社を紹介してもらい、そこで自由に作品を描きながら作画や構成などの修業を積みました」

「それから2年後に『少女フレンド』にスカウトされ、さらに『マーガレット』へと引き抜かれます。連載や長編などを描き、ある程度実績を上げた頃を見計らい、『ベルばら』を描きたいと打診しました。当初、編集部から『歴史物は当たったためしがない』と反対されますが、『必ず当てます』と言い返し、『当たらなかったらすぐに打ち切る』という条件で72年から連載を始めました」

男装の麗人「オスカル」、男性心理が分からないから女性に

――「ベルばら」は大ヒットし、74年に宝塚歌劇団で舞台化されるなど社会現象になりますね。

「ヒットした要因は、やはり男装の麗人、オスカルという架空人物を登場させたことでしょうね。革命時に市民の側に立ったフランス衛兵隊の隊長を描きたかったけど、私はまだ24、25歳で男性心理がよく分からない。だから苦肉の策で女性という設定で描くことにしたんです。最初はアントワネットを主人公にするつもりでしたが、中盤からはオスカルが主人公になります。ケガの功名のようなものですね」

大ヒットした「ベルサイユのばら」(文庫版)

「途中で絵のタッチが変わったのは、美大の学生さんからデッサンや油絵を学んだためです。いつでも大学に戻って研究者か教員になれるように大学にはずっと在籍しましたが、結局、仕事が忙しくなり、大学7年で中退します。でも『ベルばら』以降、編集部の意向には必ずしも沿わずに自由に作品を描けるようになったのはうれしかったですね」

――今はどんな生活のリズムですか。

「毎日、歌のレッスンをしたり、漫画を描いたり、パソコンでオペラの脚本を書いたりして過ごしています。昔から夜中に集中して仕事をする夜型人間なので、就寝は明け方3時くらい。起床はお昼すぎが多いですね。だから朝早いリハーサルがある時はつらいです。一昨年に拠点を東京から移した熱海のマンションは景色もいいし、快適なので仕事にもよく集中できます。台風が来たりすると大変ですが……。今年はクリスマスコンサートで歌いますし、オペラ制作にも取り組む予定です。ぜひご期待ください」

(聞き手は編集委員 小林明)

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