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著者に聞く 仕事の風景

個別指導塾の社長に学ぶ 20代が動く言葉の伝え方 『共創のリーダーシップ』 齋藤勝己氏

2019/9/11

■言葉を「デリバリー」する感覚

20代とのふれあいに慣れている齋藤氏は「side by side」の関係を提唱する。同じ方向に視線を合わせながらも、横に並ぶ位置取りで強制や命令は避ける。方法論ややり方は異なっていても、目指す方向は同じという協調の歩調だ。

旧来の若手管理では、欠点を矯正する指導が少なくなかった。先輩の成功事例にならって、仕事の行儀を教え込まれた。だが、齋藤氏は「強みを伸ばすほうがプラスの結果につながりやすい」と発想の転換を促す。そもそも今のビジネスパーソンに求められているのは「欠点ゼロ」の優等生タイプではない。特徴がなくては、自分を差別化できない。むしろ、「対話を通じて、特徴や強みを発見していくのがリーダーの務め」という時代に変化している。

ビジネスを取り巻く諸条件が変われば、求められるリーダー像も変わって当然だ。これからのリーダーには、対話に必須の「言葉を操る力」も求められていきそうだ。「家系的には恵まれていた」と笑う齋藤氏の曽祖父は人気落語家だった初代三遊亭円歌。さすがの見事な発声と語り口だ。「自分が伝えたいと思う内容を、言葉にできる力は、これからのリーダーに欠かせない」。齋藤氏は自分がしゃべる場面の大半をビデオ録画していて、後でチェックすることを怠らない。

そつのない物言いは「心が通う対話」に向かない。表面的に聞こえてしまい、本音で語っているようにみえにくいからだ。齋藤氏は意図しているのは「デリバリー」という感覚。相手の心に届くかどうかを重視している。単なる言葉のやりとりが目的ではない。上司と部下が半期に1度の成果評価や目標設定で話し合う場合、互いの情報提供に終わってしまいやすい。しかし「ちゃんと言葉をデリバリーしないと、上っ面の対面に終わってしまう」と、齋藤氏は言葉の届き具合への目配りを求める。

■「誰かの役に立ちたい」

講師の応募者が増え続けている理由を、齋藤氏は「誰かの役に立ちたいという気持ちの表れ」と説明する。同時に「教える経験を通して、講師自身が成長を実感できる」というのも、この仕事に魅力を感じてもらいやすい理由とみる。見方を変えれば、そうした体験を20代が求めているということでもあるだろう。職場で意欲を引き出したり、業務に満足感を得てもらううえでも、貢献や成長を望む20代のマインドをつかむのは共感のスタートラインになりそうだ。

「先生みたいになりたい」という教え子からの声を受けて、講師は奮起し育つという。やがて生徒は本当に講師となり、講師を支える社員へ。今も講師のうち約2100人は元生徒だ。「仕事も同じ」と齋藤氏は言う。経営者、管理職、上司、先輩を見て、若手は学ぶ。若手が意欲を失う原因は、必ずしも彼ら自身だけにあるのではないだろう。変わるべきなのは若手か、リーダーの側か――。齋藤氏の結論ははっきりしている。「リーダーが変わるしかない」。1万1千人の学生講師と向き合い続けているリーダーの言葉は重い。

齋藤勝己
東京個別指導学院社長。中央大学経済学部卒。1987年富士屋ホテル入社。98年東京個別指導学院入社。教室長、営業本部長などを経て、2014年社長に就任。経済同友会会員、日本ホスピタリティ推進協会理事。

共創のリーダーシップ~教育のプロが教える、部下と共に成長する関係性のつくり方~

著者 : 齋藤 勝己(東京個別指導学院 代表取締役社長)
出版 : 扶桑社
価格 : 1,512円 (税込み)

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