中高つなぐ熱い体験 「開成人」は運動会で磨かれる開成中学・高校(中) 教育ジャーナリスト・おおたとしまさ

開成の「一部になる」

リレーなど学年をまたぐ種目もいくつかあるが、基本的に各学年で1つの競技を行う。中1は「馬上鉢巻取り」、中2は「綱取り」、中3は「俵取り」、高1は「騎馬戦」、そして高2と高3が「棒倒し」だ。競技はそれぞれ8チームのトーナメント戦で競われる。高3の棒倒しでは1位から8位まで順位を決めるので、総競技時間は2時間にもおよぶ。

旗を振る各組の応援団も精鋭ぞろい

開成の運動会は、毎年「母の日」(5月の第2日曜日)に開く。その日に備える放課後練習は1学期の始業直後から始まる。高3の先輩が毎年、各学年の後輩を熱血指導するのだ。

緻密な作戦を実行するため、放課後に作戦会議と練習をくり返す。練習風景は動画に撮り、改善点を見つける。年に1度の競技のために部活以上の気合いで取り組む。

いつごろからこれほど熱心に取り組むようになったのか。卒業して30年ほどのOBに聞いてみると、動画による分析や敵チームの偵察は、当時からしていたという。「昔はダンゴというポジションがあって……」と作戦を語り出すと止まらない。「2時間は話せますよ」と笑う。

つい数カ月前まで受験勉強に明け暮れていた中1生たちは、先輩たちのあまりの気迫に度肝を抜かれる。「聞いてはいたが、ここまで激しいのか……」。連日の放課後練習でヘトヘト。運動会が終わるまでは部活への参加も許されない。

そんな熱い関わりのなかで、中1生たちは高3の先輩たちにあこがれを抱くようになる。兄弟のような信頼関係で結ばれる。そうして彼らは「開成に入る」のではなく、「開成の一部になる」のだ。

運動会の前日、「学生ホール」と呼ばれる食堂をのぞくと、中学生たちが運動会のパンフレットを読みふけっていた。チームの色ごとに作った立派な文集で、本番での奮闘を促す熱い言葉が並んでいる。最終ページには、高3の先輩たちが後輩一人ひとりに向けた手書きのメッセージを書き込んで渡すのが習わしだ。そのメッセージをうれしそうに読んでいたわけである。

勝っても、負けても「号泣」

当日は午前7時の開場時点で見学者の長い列ができる。保護者はもちろん、受験生親子の姿も多い。近年では「開成の運動会を見に行ったのですが、あまりの人混みで競技はほとんど見られませんでした」という受験生保護者の声も多い。ただ、入学を考えるのなら、あの雰囲気だけでも肌で感じておいたほうがいい。

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