2019年のテレビは「買い」 国産は4K有機ELへ西田宗千佳のデジタル未来図

例えばTCLの場合、もっとも安価な4Kテレビ「P8シリーズ」の場合、43型なら5万円で買える(ただしこの製品に4K放送のチューナーは内蔵されていない)。Hisenseも似たような価格帯だ。

TCLの4K液晶テレビ「P8」シリーズ

従来も、低価格をウリにするテレビメーカーはあったが、それらはテレビを低価格で調達して販売するのに近かった。現在日本市場で存在感が出てきているのは、諸外国で多数のテレビを売っている中国メーカーがそのまま日本に参入した、という形である。そのため、部品の調達能力や量産能力で有利であり、価格競争力が高い。実は技術力もある。画質面ではトップメーカーに劣るが、価格から考えれば十分な満足感を得られる水準といえる。

TCLがどこまでシェアを伸ばせるかは未知数だが、低価格・大型市場を軸に、中国系メーカーのシェアが大きくなっていく可能性は高い。

有機ELシフトが進む日本メーカーのテレビ

一方国内大手はどうか? すでに述べたように「高付加価値路線」で勝負している。特に中心となりつつあるのが、有機ELパネルを使った4Kモデルだ。

現状、有機ELテレビはすべて、韓国LGディスプレーが生産したパネルを使っている。そういう意味では差別化が難しいのだが、有機ELパネルをコントロールする方法がより細かく開示され、テレビメーカー側で工夫する余地が生まれている。また、最新の有機ELパネルは、以前より明るくなり、液晶に比べて不利といわれていた部分が緩和された。ソニーや東芝映像ソリューションは、特に赤の画素を中心に輝度をコントロールしやすくなったことを生かして、画質向上に努めている。パナソニックは最上位の「GZ2000」で、LGディスプレーから有機ELパネルをより細かな部品単位で調達し、自社内でテレビ向けに組み立てることで、輝度アップや画質の均質化などに取り組んでいる。そういう意味で、19年の有機ELは「18年モデルより良い」と明確に言える。当たり年だ。

ソニーのフラッグシップ、77インチの有機ELテレビ「ブラビアKJ-77A9G」
パナソニックの最上位テレビ「GZ2000」

LGエレクトロニクスにとって、高付加価値テレビを作って売ってくれる日本メーカーは良い「お客様」。そのため、日本のテレビメーカーとの関係は良好だ。だからこそ、こうしたカスタマイズに取り組めるのである。

パネルの価格も下がってきており、特に55型の製品はハイエンドな液晶製品との価格差が数万円レベルになってきている。テレビの使う年数が長くなっていることもあり1年当たりのコスト差は小さくなった。そのため「有機ELを」と考える人も増えている。

東芝映像ソリューションの調べによれば、同社のテレビのうち、有機ELが占める割合は55型で47%、65型で46%になった。ほぼ半数が有機EL、という段階になったのだ。

有機ELはコントラストと発色に秀でており、特に映画などを見る場合、液晶とは大きな差が生まれやすい。55型よりも大きなクラスを選ぶようなテレビに画質や迫力を求める層には、有機ELの価値が高まっている。

なお、シャープは有機EL製品を採用せず、自社の「8K」液晶パネルを使った製品展開をしている。8Kはかなり高いが、解像感という意味で他社よりも一歩先んじており、これはこれで「高付加価値路線」であることに変わりはない。

こうしたことから、日本メーカー(+有機ELディスプレーを作っているLG)と中国系メーカーが、明確にすみ分ける市場になってきた、といっていい。

問題は、低価格路線に顧客を奪われる量がどれだけあるのかということ、そして、低価格路線の中国メーカーが、いつ有機ELで同クラスのものを作ってくるのか、ということにある。日本メーカーは安穏としていられない状況だが、1、2年で追いつかれるわけでもない。そういう微妙なパワーバランスにあるのが、今のテレビ市場、といえるだろう。

西田宗千佳
フリージャーナリスト。1971年福井県生まれ。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、ネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。
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