石そっくりのプラスチックが遍在 新たな汚染問題に

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/9/13
ナショナルジオグラフィック日本版

英国コーンウォールの浜辺で収集されたパイロプラスチック。石にしか見えない(PHOTOGRAPH BY ROB ARNOLD)

英国南西部の海岸の浜辺を歩くと、打ち上げられた漂流物に混ざって小さなものから重いものまで、様々な石を見かける。どれも、見た目は代わり映えしない。違いといえば、灰色でも濃淡が違っているくらいだ。よく見れば色味が混じっているものもあり、どれも表面はすべすべしている。

実際に手にとって見ると、見た目は同じでも、石ではないものが含まれていることに気付くだろう。

それこそが「パイロプラスチック」だ。パイロプラスチックとは、焼かれることで石そっくりの外観を持つプラスチックのこと。今、新たなプラスチック汚染の原因として注目されている。地質学者でさえ、パイロプラスチックを石と見間違うことがある。英プリマス大学の環境科学者、アンドリュー・ターナー氏は、学術誌『Science of the Total Environment』に発表した論文で、パイロプラスチックは英国のみならず、世界の至るところに遍在する可能性があると指摘している。

「パイロプラスチックは自然の石によく似ています。パイロプラスチックばかりの場所があったとして、そこを歩いても、石ではないとは気づけないでしょう」と、ターナー氏は言う。

なぜ、石そっくりに?

ターナー氏が、パイロプラスチックに気づいたのは、数年前、「コーニッシュ・プラスチック汚染連合」(観光客で賑わう英コーンウォール郡のビーチ清掃に取り組む団体の連合)のボランティアからの連絡がきっかけだった。

浜辺でゴミ拾いをしている人々が、石そっくりの謎の物体をよく見かけるようになったというものだった。物体はプラスチックでできており、水に浮かぶほど軽かった。ボランティアの中には、何千個も集めた人もいた。コーンウォール在住の環境アーティスト、ロブ・アーノルド氏などは、地元の美術館で、来館者がプラスチックの中に混ざった本物の石を探し当てるという趣向の展示までしていた。ちなみに、本物の石を見つけられた人はほとんどいなかった、という。

「展示は大成功でしたが、同時に空恐ろしくなりました」と、アーノルド氏は振り返る。「展示を見た人たちは、プラスチック汚染が身近なところにあるのに、それが見えていない現実にひどく驚いていました」

1年ほど前、ターナー氏はこの現象を、より体系的に調査することにした。ソーシャルメディアを通じて呼びかけたところ、英スコットランドからカナダのブリティッシュコロンビア州まで、さまざまな場所からパイロプラスチックのサンプルが集められた。最終的にターナー氏は、コーンウォールですばらしい浜辺があるウィットサンド湾沿いで収集されたパイロプラスチックを集中的に調べることにした。

大きさや密度の測定を行った後、ターナー氏のチームは、X線および赤外分光法を用いてプラスチックの化学組成を調べた。

その結果、これらの「石」は、プラスチックとしては一般的なポリエチレンとポリプロピレンからできていることが判明した。さらにパイロプラスチックには、化学物質が含まれており、特に鉛が目立った。クロムも検出されることが多かった。

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