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ワインを甘くおいしく 酸化防止剤なしで醸す日本の技エンジョイ・ワイン(16)

サントリーの「酸化防止剤無添加のおいしいワイン。」

加熱処理は主に瓶詰した直後に施す。ボトルごと加熱し、ワインの温度を50度前後以上に高めると、ワイン中に残存する微生物が死滅し、酵素も破壊される。これによって、亜硫酸塩を加えなくても、ワインの変質を防ぐことができる。加熱処理は同じ醸造酒である日本酒の世界では「火入れ」と呼ばれ、室町時代から行われてきた。つまり、日本の伝統の技を応用したとも言える。

濾過は微生物の除去が目的で、瓶詰前に行う。通常のワインの製造でも行われているが、穴の大きさが1000分の1ミリ未満という高性能フィルターが開発されたことで、酸化防止剤無添加ワインの製造がより容易になった。

発酵食品であるワインにとって、微生物の徹底した除去はもろ刃の剣でもある。「ワインの味わいをゆっくりと高めてくれる有用な微生物まで取り除いてしまう」(増子さん)からだ。ただ、酸化防止剤無添加ワインは短期間で消費されることを想定しているため、メーカーは微生物による汚染リスクを避けることのほうをより重視しているようだ。

こうして造られる酸化防止剤無添加ワインには、実はもう一つ売れる理由があった。日本人の好みに合うよう、様々な醸造技術を駆使してワインの風味を調整してあるのだ。

一般に、白ワインは酸味と果実味のバランス、赤ワインは酸味と果実味、タンニン(渋み)のバランスが、おいしいワインの条件とされる。しかし、辛口ワインに慣れていない日本人、とりわけ酸化防止剤無添加ワインの主要購買層である中高年には、ワイン独特の酸味やタンニンが苦手な人も多い。

そのため、酸化防止剤無添加ワインのほとんどは白も赤も酸味を抑え、赤はタンニンもほぼ感じない、「やや辛口」や「やや甘口」の味わいに仕立ててある。「酸化防止剤無添加」の文字にひかれて買い、意外においしいと感じてリピーターになるのには、こんな秘密が隠されていたのだ。

甘めの味わいにするもう一つの理由は食事との相性だ。照り焼きやかば焼き、肉じゃがなど、しょうゆや砂糖、みりんで味付けした甘辛味の和食には、実は辛口ワインはあまり合わない。酸味やタンニンが甘辛い味とけんかしてしまうためだ。だが、味わいが似通った酸化防止剤無添加ワインだと、逆に舌の上でハーモニーを奏でる。「ワインの程よい甘さが食材の辛さを中和してくれるので、カレーにも合う」(椎木さん)。

財布にやさしく、安心して飲め、日本の食卓にも合う。そんな酸化防止剤無添加ワインは、まさに家飲みにピッタリのワインと言えそうだ。

(ライター 猪瀬聖)


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