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転勤は希望者に限定を 海外企業に倣うべき ダイバーシティ進化論(出口治明)

2019/9/7

写真はイメージ=PIXTA

転勤は日本特有の制度だ。海外では経営層を除き、希望した人だけが転勤する。ではなぜ、日本は会社都合で転勤させるのか。

戦後の人口増加や高度成長を前提にした一括採用、終身雇用、年功序列という労働慣行が背景にある。一生雇用するならいろいろな職場を経験させた方が使いやすいというわけだ。その延長線上で、いつでも転勤可能な総合職が出世コースになった。だがこれは2つの点でゆがんでいる。

ひとつは、会社が「社員は地域社会と関係がない」と考えている点だ。でも実は週末はサッカーチームで子どもに慕われている名コーチかもしれない。人は地域とつながって生きている。

もう一つはパートナーだ。どうせ相方は専業主婦(夫)で黙ってついてくるしかないと思っている。このゆがんだ考え方の上に転勤という制度が成り立ってきた。

家族の絆を断ち切る単身赴任も日本独特だ。こんな非人間的な制度を続けていれば、若い優秀な人がどんどん流出して企業は衰退していく。最近は転勤をなくした企業もあるが、当たり前のこと。転勤は希望者だけというグローバルな労働慣行を打ち立てよう。希望しない人に転勤させるのは制度によるパワハラだ。

次のような反論を述べる人がいる。「札幌や福岡は希望者が殺到するだろうが、過疎地に行きたい人がいますか」。では過疎地は何で困っているのか。仕事がなくて困っているのだ。社内に希望者がいなければ、地元で採用すればいいではないか。その企業は地元で大歓迎されよう。地元の社員は地域のことをよく知っているので企業にもメリットがある。

だから希望者のみ転勤で全く問題はない。ジョブローテーションは終身雇用が前提だ。しかし今年の新入社員に今の会社で何年働くかを尋ねたら5年以内と答えた人が37%。そもそも自分のいる会社が一生つぶれない保証はどこにもない。希望しない人を強制的に転勤させるのは人権侵害だ。

世界に目を向けると、有能な人は転勤がなくても出世していく。自分のそばにいる社員しか評価できない経営者は無能だ。地方にいる人が優秀ならトップに据えればいい。実績を重視すればどこにいようと優秀者は数字で分かる。まずは、転勤可能な総合職が一番上だという悪習をとっぱらわないといけない。

出口治明
立命館アジア太平洋大学学長。1948年生まれ。72年日本生命に入社、ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを務める。退社後、2008年にライフネット生命を創業し社長に就任。13年から会長。17年6月に退任し、18年1月から現職。『「働き方」の教科書』、『生命保険入門 新版』など著書多数。

[日本経済新聞朝刊2019年9月2日付]

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