完全ワイヤレスイヤホン 人気6モデル聴き比べてみた
人気の完全ワイヤレスイヤホン。価格によって音は変わるのだろうか? 入門機から本格モデルまで、人気6製品を集めてPC21編集部が総がかりで比較した。記事は今日と明日の2回にわたって詳しくお届けする。今日は完全ワイヤレスイヤホンの基本的な選び方と3製品のレビューを紹介しよう。
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完全ワイヤレスイヤホンの火付け役といえば2016年9月に発表されたアップルの「AirPods」だろう。あれから約3年、多くのメーカーが完全ワイヤレスイヤホンに参入。現在では、多数の製品が市場をにぎわせている。
完全ワイヤレスイヤホンの魅力は、何といってもケーブルの煩わしさから解放されること。一度この快感を知ると、有線モデルに戻れなくなるという人は多い。初期の製品では音切れが激しいものや電池の持ちが悪いものもあったが、現行モデルではこれらの問題はほぼ解消されており、音質もかなり向上している。完全ワイヤレスイヤホンに興味はあるが手を出せずにいたという人には、機能が向上し、製品数が増えた今こそが、まさに買いどきといっても過言ではない。
なお、完全ワイヤレスイヤホンを選択する際は、「形状」「連続使用時間」「音質」がポイントになる。形状は、音楽に没頭したいならカナル型、開放感を求めるならインイヤー型がオススメだ。
連続使用時間は製品によって大きく異なる。出張などでの長時間利用を考えているならイヤホン単体での連続使用時間をチェックしたい。音質はドライバーユニットで大きく変わる。同じ型でも材質やチューニングで音の傾向は異なるので、できれば実際に試聴して好みに合う製品を選ぼう。対応音声コーデックも音質の目安となる。ほとんどの場合、スマホとの接続は簡単だ。
6製品を総チェック
完全ワイヤレスイヤホンは、現在、5000円前後の入門モデルから2万円以上の本格モデルまで幅広い製品が販売されている。価格が高いほど音が良いのだろうと何となくは想像できるが、その違いは本当に素人が聴いてもハッキリわかるのだろうか。
今回はその疑問を払拭するべく、編集部員とライターの8人で、完全ワイヤレスイヤホンの人気モデルを試聴してみることにした。騒がしい電車や職場の中で聴くことが多かったり、音楽ではなく動画などの試聴がメインであったりと、普段聴いている環境は8人それぞれ。一般ユーザーの生の声として、専門家とはひと味違うコメントや評価を掲載することで、製品の真の姿に迫ってみた。
評価する製品は、イヤホン・ヘッドホン専門店「e☆イヤホン」に協力を依頼。人気と実力を兼ね備えた5製品を選んでもらい、さらに売れ筋の「AirPods」を編集部で加えた計6製品をチェックした。
どれもが価格以上の音質と機能を備えたモデルばかり。そのうえでどの程度違うのかを編集部員とライターがそれぞれ独自の観点で聴き比べてみた。ちなみに、試聴した各人のプロフィールは以下の表にまとめた通りだ。
●ソニー「WF-1000XM3」
ソニーの完全ワイヤレスイヤホンの最上位モデル。7月に発売されたばかりの新製品で、17年に発売された同社初の完全ワイヤレスイヤホン「WF-1000X」の後継モデルとなる。WF-1000Xは、完全ワイヤレスイヤホンとしては初のノイズキャンセリング機能搭載など高機能かつ高音質ということで高い人気を得たが、本機は機能、音質ともにさらにグレードアップしている。
注目はバッテリー性能。イヤホン単体での連続再生時間が最大6時間(ノイズキャンセリング機能オン時)とWF-1000Xの2倍に向上。新たに10分の充電で90分の再生を可能にする急速充電にも対応した。WF-1000Xは、高機能だがそのぶんバッテリーの持ちが悪い点が弱点だったので、それが見事に解消された形だ。
音質も向上している。今回ピックアップした製品の中では解像度は最高クラス。音場は広く、音のバランスも良い。「きれいな音。聴いていて疲れない」「躍動感がある音で音楽を楽しく聴くことができる」「生楽器の繊細な音色の表現も十分」など、全員が音質に関しては文句なしの評価だった。
ノイズキャンセリング機能については、耳に合ったイヤーピースを付けるとかなりの効果が得られる。ただし、オーバーヘッドタイプと比べるとやはり効果は若干甘い印象だ。
唯一の弱点は高価なこと。しかし予算が許すならば、選択肢の筆頭候補にしたい1台だ。
●アップル「AirPods with Charging Case」
完全ワイヤレスイヤホンを世に広めた「AirPods」の第2世代モデル。見た目は第1世代とまったく変わらないが、サウンドや通信などを制御するマルチチップが「W1チップ」から最新の「H1チップ」へと進化。これによりブルートゥース接続の安定性が向上するとともに遅延がより減少、バッテリーの性能も若干ながら向上した。
また、「ヘイ、シリ!」と話しかけることで音声アシスタントの「Siri」を呼び出し、「音量を上げて」「次の曲を再生して」「音楽を一時停止して」というように音声のみで各種操作が可能になった。
音質は、全域がバランス良く出ており、クセがなく誰もが美音と感じる音。今回の視聴においても、「音が濁っていなくて聴きやすい」「低音も十分出ており、打ち込み系の音も楽しめる」など、おおむね高評価であった。
ただし、カナル型ではなくインイヤー型のため、「周囲の音が聞こえ音楽に集中できない」「音場が狭く感じられる」など、音楽に集中したい人からはネガティブな意見も挙がった。また、形状が耳に合わないと、音も悪くなるし、すぐに外れてしまうという意見もあった。イヤーピースで調整できないタイプなので、購入する前に、自分の耳に合うか確認することが重要といえそうだ。
AirPodsは、アップルの純正だけありiPhoneとすぐに接続できるなど相性は抜群。高価ではあるが、iPhoneユーザーにはメリットが多く、その価値は十分ある。
●オーディオテクニカ「ATH-CKS5TW」
国内老舗ヘッドホンメーカーであるオーディオテクニカの完全ワイヤレスイヤホン。キレのある重低音再生をウリとする「SOLID BASE」シリーズに属するモデルで、2層の振動板を採用した10ミリ径の大型ドライバーを搭載することで、イヤホンながらも厚みのある低域と鮮明な中高域を再現している。
注目は、完全ワイヤレスイヤホンとしては抜群のバッテリー性能を持つこと。イヤホン単体で何と最大15時間の連続再生が可能。充電ケースで繰り返し充電しながら使えば最大45時間も再生できる。長時間連続で使用したい人や充電をついつい忘れがちという人は要注目だ。また、耳へのホールド感を高める専用設計の「3Dループサポート」が付属するなど、国内メーカーならではの細やかな気配りがなされている点も本機の注目ポイントといえる。
音質はさすが国内老舗メーカーといったところ。解像度が高く、音場も広め。音の再現性も良い。ただ、重低音をウリにするシリーズだけに曲によっては低音が邪魔になる傾向がある。今回も、「繊細な音もきっちり表現するレベルの高い音質」「1つ1つの音をしっかり再現しているので、大編成の交響曲でも破綻することなく、しっかり聴かせる」などの高評価があった。
一方、「低音が出すぎ」「中域から低域がもっさりした感じ」などネガティブな意見も多くあり、評価が分かれた。本機は音が自分の好みに合うか、購入前にしっかり試聴することが重要といえそうだ。
明日は残り3製品のレビューと総評をお届けする。
[日経PC21 2019年10月号掲載記事を再構成]
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