組織で働く人を勇気づける 任天堂元社長岩田氏の言葉八重洲ブックセンター本店

語っているのはビジネスパーソンだが、よくある経営書ではあまり見かけない柔らかいことばの連なりが目をひく。例えばこんなことば。「誰かとつながりながら、何事かをなし遂げようとするとき、自分以外の人たち、別の意思と価値観を持って動いている人たちに、『敬意を持てるかどうか』っていうのが、ものすごく大事になってくるとわたしは思ってるんです」

また、こんなことば。「わたしは、ただしいことよりも、人がよろこんでくれることが好きです」。家庭用ゲーム機「Wii」や携帯ゲーム機「3DS」を世に出し、10年以上、任天堂のトップとしてビジネスを指揮した岩田氏の等身大の思想と哲学が浮かび上がる。それがまっすぐに経営の姿勢や態度につながっていく。それゆえ組織で働く人なら、自らを勇気づけたり自分の指針になったりしそうなことばを、本書からいくつも見つけ出せるはずだ。糸井氏が「岩田さんを語る。」で語った「リーダーをやってるんだけど、どこか弟役も担っている」ということばから、今日的なリーダーシップについて考えてみるのもおもしろい。

「突出した売れ方ではないが、コンスタントにじわじわ売れている」とビジネス書を担当する本店マネジャーの川原敏治さんは話す。自己啓発系のビジネス書が声高にマインドセットを説く中で、リーダーその人が折に触れて考え感じたことを言葉にしている点が、かえってビジネスパーソンの心をとらえているのかもしれない。

『Think clearly』が息長い売れ筋に

それでは、先週のベスト5を見ておこう。

(1)DX実行戦略 マイケル・ウェイドほか著(日本経済新聞出版社)
(2)地域金融機関の有価証券運用オールニッポン・アセットマネジメント株式会社著(きんざい)
(3)Think clearlyロルフ・ドベリ著(サンマーク出版)
(4)超魔術の裏技術Mr.マリック著(ワニブックス)
(5)いちばんやさしいマーケティングの教本中野崇著(インプレス)

(八重洲ブックセンター本店、2019年8月18~24日)

1位はデジタルトランスフォーメーション(DX)の進め方を説いた本。2位は地域金融機関の実務者向けに資産運用の戦略立案、リスク管理などを解説した専門書だ。3位には、本欄「最新の学術研究から導く よい人生送る思考の道具箱」の記事で5月に紹介した思考法の翻訳書が入った。息の長い売れ筋だ。4位は、テレビなどでおなじみの魔術師が自らの魔術をプレゼンテクニックとして語った本。5位には人気講師による顧客視点のマーケティングの基本をまとめた「いちばんやさしい教本」シリーズの最新刊が入った。今回紹介した『岩田さん』は15位だった。

(水柿武志)

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