歯ぎしりで歯を失う人が増加 神経抜いていたら要注意大切な歯を守る(上)

日経ヘルス

2019/9/9
(イラスト:進藤やす子)
(イラスト:進藤やす子)
日経ヘルス

寝ている間の歯ぎしりや気づかぬうちの食いしばりが、歯が折れる「破折(はせつ)」の原因になることがある。歯に繰り返し過度な力がかかっているためだ。虫歯や歯周病で歯を失う人が減っている一方、この破折による抜歯が増えている。

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睡眠中にキリキリと歯をこすり合わせる「歯ぎしり」、知らないうちに歯をかみしめている「食いしばり」。これらは総称して「ブラキシズム」と呼ばれ、歯が折れる一因になっている。

(イラスト:進藤やす子)

破折は、歯周病、虫歯に次いで歯を失う原因の3位。破折の多くが、歯の根っこにひびが入って折れてしまう「歯根破折(しこんはせつ)」だ。最近増えており、30代、40代も例外ではない。

歯根破折の原因は、歯ぎしりや食いしばりなどで歯に過度な力がかかることだ。「5~15%の人が睡眠中に歯ぎしりをしている。歯ぎしりをすると歯に体重以上の大きな力がかかることもある。それが日常的に繰り返されることで歯根部にひびが入り、やがて折れてしまう」と、昭和大学歯学部歯科補綴学講座の馬場一美教授は話す。他にも、硬いものをよく食べる人や早食いをする人も、かむ力が強くなりすぎて歯が折れるリスクが上がる。

また虫歯の治療で神経を抜いている歯も要注意。神経を取ると歯自体が弱くなるからだ。「神経を取った後、歯の中に金属芯を入れて差し歯にしている人も多い。金属は硬すぎるため、かんだ力が歯根に均等に分散せず、特定の場所に集中する。このため治療から5~10年かけて歯根破折に至る人が少なくない」と、眞坂歯科医院の眞坂信夫会長は説明する。

(右上写真提供:馬場教授)

次回は歯ぎしりや食いしばりへの対策を取り上げる。

馬場一美さん
昭和大学歯学部(東京都大田区)歯科補綴学講座教授。東京医科歯科大学歯学卒業、同大学院修了。同大学歯学部講師などを経て、2007年から昭和大学歯学部歯科補綴学講座教授。同大学歯科病院病院長、日本補綴歯科学会副理事長なども務める。ブラキシズムに詳しい。
眞坂信夫さん
眞坂歯科医院(東京都世田谷区)会長。東京歯科大学卒業、同大学院修了。1970年に開業。30年以上前から歯根破折した歯を残す接着治療に取り組む。接着治療の第一人者。できるだけ歯を抜かない、神経を取らない治療を標榜する。日本接着歯学会を創設。

(ライター 佐田節子、構成 堀田恵美)

[日経ヘルス2019年8月号の記事を再構成]