日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/8/31

暑く、乾燥する夏のあいだに木々を弱らせないよう、多くの生産者が灌漑システムを設けている。トリュフが採れる森の生物多様性を高めたり、さまざまな技術で菌の接種を試したりといったことも行われている。しかし、あらゆる設備や方策をもってしても、年間収穫量は安定しない。科学者や一部のトリュフ生産者が考えている潜在的ストレスの1つが、変化する気候だ。

「もちろん、生産者たちは気候の影響に気付いています」。フランス国立科学研究センターの文化人類学者で、ヨーロッパ各地のトリュフ生産地で地域社会と協力してきたイルディズ・オーミルディー=トマス氏は話す。「トリュフが育つ環境と天候の複雑な相互作用を、間近で観察しているのが生産者たちです」

気候変動がトリュフにも影響

トリュフをめぐる仕組みを注意深く見てきた彼らにとって、理想的な条件があった。春に適度な雨があり、夏は暑く、少々雨が降り、そして冬が穏やかなことだ。過去には好条件の年があり、トリュフが豊富に採れた。

だが、それ以外の年は思わしくなかった。特に悪かったのが、夏が長く、暑く、雨が少ない年だった。ビュンテン氏ら研究者たちが、自由に使える過去49年分のデータを詳しく調べ始めると、1970年から2000年代初めにかけて、南欧の一部で猛暑の夏がどんどん増えていることがわかってきた。そして、トリュフの収量が目立って少なかった年と一致していた。

このパターンを作り出しているのが、実は気温ではないこともわかった。毎年冬の収穫前に降る、夏の間の雨量だった。温度が上がれば、木々にかかる渇水のストレスはどこでも強まるため、高温が状況を悪化させていると考えられた。しかし、1990年代以降で最も強く関係しているとみられるのは、雨だった。

意外なことに、木々に灌漑が行われているプランテーションですら、このパターンが成り立っていた。生産者たちが高い費用をかけて、オークに注いでいた貴重な水は無駄になっていたことを示唆している。

気候学者たちは、地球温暖化が進むにつれ、渇水はさらにひどくなるだろうと予測している。「ヨーロッパでは、黒トリュフが生きられる限界を超えてしまうでしょう」と話すのは、英スターリング大学で菌類を専門に研究するポール・トマス氏だ。

「2071年までに、いま黒トリュフが採れる気候帯の多くは、気候変動によって生育に適さなくなると考えられます」とトマス氏、「また、灌漑ができるとも限りません。水は今より少なくなるからです」

「トリュフにとっては、かなり厳しい未来が待っています」と、トマス氏は語っている。

(文 Alejandra Borunda、訳 高野夏美、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年8月11日付]