不気味でも生物の半分近くは寄生虫 生態系の要だった神戸大学 群集生態学 佐藤拓哉(5)

「──発表を聞いた他の研究者が『ゴミムシに寄生してるのを見た』などと教えてくれるんです。ゴミムシって甲虫の仲間で、カマドウマはバッタの仲間なので、えらい分類群違うやつに寄生できるんやとまずびっくりして。で、さらに話してると『僕は秋に見た』『こっちは春だ』とか。これは一体何なんだろう。ハリガネムシが起こすエネルギーの流れがすごいでかいんだとすると、森と川の生態系がつながるタイミングに重要な影響を及ぼしてるかもしれないということで、全国の研究林を順番に回って、『ハリガネムシがいつ川に落ちてくるか、調べてもらえませんか』と頼んで回ったんです。その後とれたのを送ってもらったのを見ると、きれいな結果になりました。北海道のサイトは春の6月7月にピークをもってハリガネムシが動いていて、本州だと東北であろうが近畿であろうが、秋に起こるんですね」

「──寄生虫が宿主に寄生するときって、その宿主からできるだけ搾取しないともったいないので、繁殖ギリギリまでは寄生しているようです。北海道では宿主がゴミムシでして、春先に産卵するので、そのギリギリまで搾取して川に捨てると。本州側にやってくると宿主はカマドウマがメインなので、秋のギリギリまで搾取して川に捨てるっていうようなことをして、北海道との境界できれいに分かれるんじゃないかなと」

ハリガネムシが作り出すエネルギーの流れの大きさ、さらに地域による時期の違いなど、様々な要素が明らかになってきている。これらを知るだけで、なにか森と川という場が違って見えてくる研究だ。

では、今後、佐藤さんは、どのような方向に研究を進めるのか。

まず生態学者としての本懐はむしろフィールドにある。

昆虫をトラップしたビン

「今、川の近くにマレーゼトラップというのを仕掛けて、水生昆虫の成虫を捕っています。ハリガネムシの生活史を詳しく記述しながら考えないと、もっと長いスパンでの森とかのつながりってわからなくなってきているので。あれでうまくハリガネムシに感染した水生昆虫の成虫が捕れるようだと、森中にあちこちに設置して、季節的にどんな水生昆虫がどのくらいハリガネムシを森に連れて行っているのかを調べたいなと思ってるんです」

たしかに、森と川をつなぐエネルギーの流れは、陸から川へ(カマドウマの飛び込み)というのもあれば、逆に川から陸へのパターンもある。そもそも、カマドウマは、羽化して川から飛び立った水生昆虫を食べてハリガネムシに感染する。こういった、複雑な系の背景にある、基本的なつながり方を解明するのは、それこそ生態学の本分であろう。

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