24時間営業やめたら増収 ロイヤルホストの働き方改革黒須康宏ロイヤルホールディングス社長(上)

1958年生まれ。82年名城大学卒業。在学中にアルバイトを経験、同年ロイヤル(現ロイヤルHD)入社。2011年ロイヤルホスト副社長、同年ロイヤルHD取締役。16年3月より社長兼最高執行責任者(COO)、19年3月より社長兼最高経営責任者(CEO)(撮影:吉村永)
1958年生まれ。82年名城大学卒業。在学中にアルバイトを経験、同年ロイヤル(現ロイヤルHD)入社。2011年ロイヤルホスト副社長、同年ロイヤルHD取締役。16年3月より社長兼最高執行責任者(COO)、19年3月より社長兼最高経営責任者(CEO)(撮影:吉村永)

2018年に約25兆7000億円という巨大な外食市場だが、深刻な人手不足に直面している。そんな中、ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」は24時間営業の廃止、元日を含む店休日の設定、19年からは従業員に「7連休取得」を推奨するなど、次々と働き方改革の手を打ち続ける。ロイヤルホールディングスの黒須康宏社長に聞いた。

SNSなどの環境変化で深夜の顧客が減少

白河桃子さん(以下敬称略) 人材不足を補うための働き方改革が、とりわけ緊急的に求められているのが飲食業界です。コンビニ業界の「24時間営業」も持続できるのか、注目を集めています。御社の主力業態であるロイヤルホストでは、17年1月に「24時間営業を廃止」するなど、営業時間短縮の施策を続けてきたそうですね。今日はその経緯と成果をお伺いしたいと思いますが、長らく続いてきた24時間社会から大きく舵(かじ)を切る戦略をいつから考え始めたのか、まず教えてくださいますか。

黒須康宏社長(以下敬称略) 営業時間短縮については、実はここ8年ほどで少しずつ進めてきた施策でして、中でも店舗の営業時間平均をマイナス1.3時間と、最も大幅に削減したタイミングが17年だったということです。

白河桃子さん

白河 それまではどのくらいの割合の店舗が24時間営業だったのでしょうか。

黒須 ロイヤルホスト全店のうち30%弱がそうでした。それをだんだん廃止して、17年1月に全店廃止する直前には、全国221店中2店舗のみが24時間営業という状況でした。ですから、一気にやめたというより、数年かけて徐々に減らしていった感じですね。現在の基本形としては、午前9時から午後12時まで。最近は午後11時半くらいにしている店舗も増えてきています。

白河 なぜ24時間営業をやめようと。いま、経済産業省の「コンビニのあり方検討会」の委員でもあるので、すごく興味があります。

黒須 背景の一つは、環境の変化です。コンビニエンスストアも24時間営業に参入していなかった昔であれば、24時間通じて飲食を提供する店舗には、早朝も深夜もたくさんのお客様に来ていただけました。しかし、今ではそういった場所も増え、以前ほどの効果はなくなったといえます。また、携帯電話やスマートフォンによる若者のコミュニケーションの変化、SNSの発達も環境変化の大きな要因です。これらによって、若い方々は深夜でも気軽にどこでも交流を楽しめるようになり、わざわざファミレスに集まる必要もなくなりましたから。

白河 たしかに、私が学生だった頃は、遅くにファミレスへ集まって友達同士でおしゃべりをしたり、朝方まで粘って勉強したりといった姿がよく見られましたよね。しかし、そういった需要は目に見えて減ったという変化がデータ上も表れていたということでしょうか。

黒須 はい。来客数の推移を見ていますと、深夜早朝時間帯は以前ほどご利用いただけなくなっているということは明らかでした。すると我々が考えなければならないのは、「では、この流れの中で、ロイヤルホストはどういうレストランであるべきか」というビジョンです。我々がこれから目指すべきレストランとしてのあり方、価値をしっかり実現していくために、24時間営業は本当に必要なのか。この根本的見直しから始まりました。

考えた結果、やはりロイヤルホストが大切にしてきたのは、「食とホスピタリティー」であり、おいしい料理と楽しい食事の時間を味わっていただくという価値である、と。

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誰かが無理をするモデルは持続可能ではない