女優・笹本玲奈さん 元宝塚の母、舞台で重なる仕草
著名人が両親から学んだことや思い出などを語る「それでも親子」。今回はミュージカルなどで活動する女優の笹本玲奈さんだ。
――お母さまは元宝塚歌劇団の四季乃花恵さんですね。
「同じ女優として、アドバイスを受けることはあったかとよく聞かれます。私は13歳のときに『ピーターパン』でデビューして以来、約20年舞台を続けてきましたが、実はつい最近まで仕事上の助言は受けたことがなかったのです。宝塚には歌舞伎の世界と似て、独自の演じ方があります。母は宝塚と異なる世界で演じる私にアドバイスすることはないとして、引いたところから見守っていたのだと思います」
「しかし昨年、舞台でマリー・アントワネットを演じたとき、私は初めて母に意見を聞きました。母には『ベルサイユのばら』で同じ役を演じた経験があったのです。大きなドレスのさばき方や貴族の所作、扇の使い方による感情表現について、母には蓄積があります。実は母も私の所作で気になっていた点があったようで、いろいろ教えてくれました」
――ミュージカルでデビューしたきっかけは。
「子どもたちが全力で踊る『アニー』の舞台に感動したことです。普通より舞台を見る機会が多い家庭環境ではありましたが、当時習っていたのはピアノだけ。アニーを見てミュージカルはダンスだと思い込み、さっそくダンスを習わせてもらいました。そのころコンビニエンスストアでピーターパン役の公募広告を見つけて、店頭の箱に応募しました。オーディションでは、ダンスと歌には自信がありました」
「その後、『レ・ミゼラブル』のエポニーヌや『ミス・サイゴン』の主人公キムなどを演じました。ロングラン公演では自分自身でいる時間より、感情を高ぶらせて役になりきっている時間の方がずっと長くなります。当時は、終演後の夜9時半ごろに帝国劇場を出て、地下鉄千代田線で千葉県の自宅に帰っていました。両親と姉が私を家族の一人として普通に扱ってくれたので、心をリセットして自分を保てました」
――家族の結束がとても固いようですね。
「東京に出て姉と暮らし、2008年に姉が結婚した後は私の結婚までの9年間、一人暮らしでした。そのころも今も家族はLINEでつながっていて、あらゆることを共有しています。家族にはカギも渡していて、地方公演などで長く部屋を空けるときは、飼っていたウサギの面倒をみてもらっていました」
「数年前、宝塚のベルばらのDVDボックスが発売され、私は舞台で演じる母の姿を初めて見ました。仕草(しぐさ)のところどころが驚くほど自分に似ています。それに声も。母方の祖父母が、舞台の上の私を見て『母に似ている、似ている』とよく言っていたのが思い出され、親子なんだなあとしみじみ感じました」
[日本経済新聞夕刊2019年8月27日付]
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