日本の借金は積もり積もって1000兆円。ちょっとイメージできない金額で「日本、だめになるんじゃない?」と誰もが思うのも当然だ。でも、学習院大学の伊藤元重教授は「国内総生産(GDP)を少しずつ成長させながら、借金を徐々に減らしていこうとしていて、この6年くらいはちょっと良くなってきたとみています」と教えてくれた。ところが、この話にはまだ続きがあったんです。
――1000兆円の借金のこと、それに対して日本は何を目指してどんなことをして、それによってどうなってきているかを知ることが大切だということまではわかってきました。
「前回はそこまでででしたね。でもね、最初にお話ししたとおり、経済は、今までに経験したことがないことがいつでも起こりうる。決して安心していいわけではないんですよ」
――やっぱりそうか。そんな単純な話じゃないですよね。
「私はいつも学生に、『前門の虎、後門のオオカミ』という中国の言葉を使って説明しています。いろいろな問題が同時に起きることを表す言葉なんですが、私はここに『当面の出血』も加えて説明するんです」
――虎とオオカミと出血??
「前門の虎が1000兆円の借金。当面の出血は、今も毎年、借金が新たに増えていることを指します。ではオオカミは何か。高齢化です」
――「少子高齢化」ってめちゃくちゃきくけど、人口が減ればその分一人に使える土地も増えるし、東京のすし詰め満員電車もなくなったらラッキーだし、そんなネガティブなことなの?とちょっと思ったりしたことあったんだけど、やっぱり日本にとって高齢化は大問題なんですね。
「団塊の世代が70歳代を超えてきていて、これから医療、年金、介護の負担が増えるんです。借金があるのに負担も増えるんだから大変です。1000兆円もすぐには減らせないし、高齢化も何かやって変えられる問題でもない。だから、まずは当面の出血を止めるために、景気を良くして税収を増やし、毎年の赤字を減らそうとしているわけです」
――さては、10月に消費税率を上げるのも、それですね。
「その通りです。赤字っていうのは、国がいろんな政策に使うお金の額が収入より大きい状態なのだから、本来は使う額を減らせばいいんです。でも、急にゴミ収集や教育、医療とか介護をやめますっていわれたら、国民は怒りますよね。だから、消費税などの税金を増やして、国に入る税収を増やそうとしているんです」
――高齢化が進むのに、消費税率を上げて借金も返しながら医療も介護も充実させるなんて、できるんですか。