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危機陥っても牛肉から逃げない 人形町今半のリスク学

人形町今半 高岡慎一郎社長(下)

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NIKKEI STYLE

現在の人形町今半は老舗すき焼き店という姿とは趣を異にする。飲食店17店、精肉店11店、総菜店4店を展開。そのバックには弁当、食品、精肉の工場を擁し、全体では従業員約1400人の企業である。だが、ここに至るまでに廃業を覚悟するほどの大きな困難に見舞われたことがあった。そこからいかに脱出したのか、その後どのような成長の経緯をたどったのか、今後外食産業の課題にどう挑戦していくのか、高岡慎一郎社長に聞いた。(前回の記事は、「人形町今半の肉哲学 和牛の味は舌じゃなくて目で選ぶ」)

――2001年6月に社長に就任され、しかしその9月に会社存続の危機に見舞われたというお話でした。

2001年9月10日です。農林水産省が、「千葉県でBSE(牛海綿状脳症)の疑いがある牛が発見された」と発表しました。それ以降、牛肉を食べることへの不安から、牛肉主体の業種全体のお客様が激減しました。

人形町今半も、店にいつもの半分ぐらいしかお客様がいないという苦境が続き、父も真剣に廃業を考えたわけです。私もお客様が半減した店に立つたび、打ちひしがれる思いでした。

でも、あるとき私は「あれ?」っと思ったんです。国中のほとんどの人が牛肉を避けている今なのに、お客様が「半分も」残ってくれていると気づいたのです。

――「半分減った」のではなく、「半分残っている」と見たのですね。

すごいことが起こっていると感じました。こんな状況でも、やっぱり牛肉を食べたくて、現に牛肉を食べに来ている人たちがここにいたのです。

実はあのとき、牛肉が不安視されるならということで、カニを出したり豚肉を出したりしていたんですけれど、それは間違いだと思いました。牛肉から逃げてはいけない。むしろ、初めて店を一から作り上げる気持ちで、牛肉にもう一度力を入れ直していこうと考えました。前回お話しした仕入れや肉の取り扱いについても、その時期に取り組んだことが生きています。

そして、ようやく社会からBSEに対する不安が消えたとき、お客様が一気に戻って来てくださった。ぶれずにやり続けることの大切さ。そして、ポジティブに見て考える大切さが身にしみました。

――人形町今半の事業は飲食店、弁当のケータリング、肉の販売の3本柱だと思いますが、今の売り上げ構成比はどのようですか。

ずっと、おおよそ1:1:1で推移してきましたが、最近は飲食店が伸びています。これはインバウンドによるところが大きいです。特に、以前はすき焼きを食べに来る外国からのお客様というのは、日本人が招いて一緒に来店するという形でしたが、今は、ネットやSNS(交流サイト)で自分たちで人形町今半を見つけて、外国人だけで来店される形が増えています。

――飲食店の運営、特に接客についての考え方はどのようなものですか。

自分が人形町今半に入ったとき、最初に言ったのは、「お客様が記念日に使いたくなる店にしたい」ということでした。ハレの日に使っていただきたい。したがって、非日常の魅力があることが大切です。

飲食店の従業員は、入社するともちろん接客の基本はしっかり教えますが、大切なのは、その先です。ハレの日に使っていただくお店。そこへ、お客様はどんな気持ちでいらっしゃるのか。お客様の立場で考えてほしいということを、いろいろな問いかけ、語りかけをしながら、意識を変えていってもらいます。ハウツーよりも、店の文化、従業員の気持ち、どんな思いで働くかということが大切です。

――人形町今半でも、ほかのお店でも、繁盛するお店の特徴というものはあるでしょうか。

店内のコミュニケーションがよい店は自然に売り上げが上がります。特に、調理担当者と接客担当者のコミュニケーションが良い店は、強い。

一般のメーカーは、製造部門と営業部門が別々にあって、それぞれ別々に動いています。ところが、その両者が1カ所にあるのがレストランです。この、動き方の異なる2つの部門間のコミュニケーションが良く、調和が取れている店の強さというのは、数字に如実に表れます。

しかし、昔の料理人には怒鳴る人が多かったので、接客の従業員が萎縮してしまって、なかなか店内の調和が取れないということがありました。これについては父も私も、料理人に対していろいろ働きかけてきましたが、大きく変わったのは、やはりBSE騒動からでした。

お客様が半分残ってくれたと言いましたが、従業員も残ってくれた。あのとき本当に厳しくて、約1年半、管理職の給料を削減し、一般社員にも負荷がかかりました。ところが、誰も辞めなかったんです。あのとき、従業員みんなが本気で人形町今半が好きでいてくれて、なんとかこの厳しいときをみんなで乗り切ろうという空気が非常に良い形で表れ、店内の調和という私たちの強みになった。

今は怒鳴るような人はいないです。

――調和の重視では、ダイバーシティーについてもお考えがあると思います。

まず、女性が非常に活躍するようになりました。男女雇用機会均等法からおよそ30年ですが、女性が輝き出したのは特にこの10年ぐらいではないでしょうか。生産人口が減るなかで、女性に活躍してほしい。また国際的にも、日本は女性の地位が低いのが問題だということで、国でも本気で女性活躍を推してきて、法整備も進みました。

そうした中、うちではまず、女性の定着率が上がってきました。結婚しても、子供が生まれても、皆ずっと働いてくれています。そして、店長になりたいという女性も出てきました。これは本当にうれしいことです。

それに比べると、男性はパワーがなくなったかなと思いますが、女性が光り輝くと、男性もそれにつれて光り輝くもの。面白くなってきました。

――人形町今半では外国人の方も多く働いていると聞きます。

たとえばうちのケータリングの弁当工場は約400人弱が働く職場ですが、約150人ぐらいが外国人です。国籍としては、今はベトナム人が多いです。

飲食店にも、外国人の従業員はいます。皆、着物を着て接客しますが、国籍といいますか話すことができる言語のマークを名札に表示しています。最近はお客様がそれを見て、「海外から来ているのね。すごいわね」というように前向きな関心を持っていただけるようになりました。

このほど、特定技能ビザを取得するための特定技能測定試験が始まりましたが、うちでも今回4人が合格しました。3人は弁当工場の従業員、1人は鉄板焼きの料理人です。今後手続きが終われば、彼らは正社員と同じ待遇で働くようになります。

先ほど言いましたように、外食業は社内・店内の調和がとても大切です。そのためには女性も外国人も、すべての従業員がやりがいをもって働けることが不可欠でしょう。私の使命は、人形町今半がこれからもおいしい牛肉をお客様に味わっていただくために、すべての従業員のための環境整備を最優先で取り組んでいくことだと考えています。

高岡慎一郎(たかおかしんいちろう)
1958年生まれ。玉川大学卒業後、コンピューター関係の会社に就職。84年人形町今半入社。仕入れや弁当の営業など地道な業務からスタートし、店長、総支配人、常務を経て、2001年社長に就任。2018年から大規模外食企業の業界団体、日本フードサービス協会(JF)会長を務める。

(香雪社 斎藤訓之)

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