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危機陥っても牛肉から逃げない 人形町今半のリスク学 人形町今半 高岡慎一郎社長(下)

2019/9/14

人形町今半社長 高岡慎一郎氏

現在の人形町今半は老舗すき焼き店という姿とは趣を異にする。飲食店17店、精肉店11店、総菜店4店を展開。そのバックには弁当、食品、精肉の工場を擁し、全体では従業員約1400人の企業である。だが、ここに至るまでに廃業を覚悟するほどの大きな困難に見舞われたことがあった。そこからいかに脱出したのか、その後どのような成長の経緯をたどったのか、今後外食産業の課題にどう挑戦していくのか、高岡慎一郎社長に聞いた。(前回の記事は、「人形町今半の肉哲学 和牛の味は舌じゃなくて目で選ぶ」)

――2001年6月に社長に就任され、しかしその9月に会社存続の危機に見舞われたというお話でした。

2001年9月10日です。農林水産省が、「千葉県でBSE(牛海綿状脳症)の疑いがある牛が発見された」と発表しました。それ以降、牛肉を食べることへの不安から、牛肉主体の業種全体のお客様が激減しました。

人形町今半も、店にいつもの半分ぐらいしかお客様がいないという苦境が続き、父も真剣に廃業を考えたわけです。私もお客様が半減した店に立つたび、打ちひしがれる思いでした。

でも、あるとき私は「あれ?」っと思ったんです。国中のほとんどの人が牛肉を避けている今なのに、お客様が「半分も」残ってくれていると気づいたのです。

――「半分減った」のではなく、「半分残っている」と見たのですね。

すごいことが起こっていると感じました。こんな状況でも、やっぱり牛肉を食べたくて、現に牛肉を食べに来ている人たちがここにいたのです。

実はあのとき、牛肉が不安視されるならということで、カニを出したり豚肉を出したりしていたんですけれど、それは間違いだと思いました。牛肉から逃げてはいけない。むしろ、初めて店を一から作り上げる気持ちで、牛肉にもう一度力を入れ直していこうと考えました。前回お話しした仕入れや肉の取り扱いについても、その時期に取り組んだことが生きています。

そして、ようやく社会からBSEに対する不安が消えたとき、お客様が一気に戻って来てくださった。ぶれずにやり続けることの大切さ。そして、ポジティブに見て考える大切さが身にしみました。

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