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立川談笑、らくご「虎の穴」

落語らしさって何だ!? 異業種とのコラボが生んだ疑問 立川吉笑

2019/8/18

佇(たたず)まいが粋だったり、バリバリの江戸弁を使いこなせたり、落語家っぽさを一瞬で伝えることができる方は当然ながらいる。だけど、たいていは僕よりもずっとキャリアが上の師匠クラス。となると、出演料が高かったり、スケジュールに空きが全くなかったり。もっと言えば、仕事の軸足が寄席にあって、ホームページやSNS(交流サイト)をあまり使われないから、企業とのマッチングがスムーズにいかないこともあるかもしれない。

その結果、SNSなどを活用して様々な仕事、いわば「落語家っぽくない活動」を普段からやっている若手に、「落語らしさ」を求めるオファーが集まってしまう。自分も、せっかくの仕事は全力で取り組みたいし、良いものにしたい。だから考える。「落語らしさ」を表現する最善の方法は何だろうか。

例えば、3分の落語形式で商品を紹介する場合。この短時間でわかりやすく「これぞ落語だ!」と伝えるのは難しい。着物姿で座布団に正座し、右を見て、左を見てと首を振りながらしゃべると、落語らしさは出せる。でも、これだけだと、どうやら弱い。

講談や浪曲、一瞬でわかる「らしさ」

落語と同じ伝統話芸と称される「講談」や「浪曲」は、また見え方が違う。いま演芸界で最も注目を浴びている神田松之丞兄さんを擁する講談は、落語と同じく座布団の上に正座をして演じるものだけど、違うのは目の前に釈台と呼ばれる机のようなものがあることと、それを張り扇でパンパンたたいたラップ音が語りの中に入ってくること。七五調をベースにした独特の言い回しや、ラップみたいにリズミカルな読み方を聞けば、聞き手は一瞬で「普通の語り口じゃない」とわかる。鮮やかに講談らしさが伝わってくる。

浪曲はさらに独特で、ストーリーを紡ぐ浪曲師とは別に、三味線を弾く曲師が同じ舞台上にいる。七五調がベースになっていることに加えて、そこに節をつけて「旅ぃ行けばぁ~~」と唸(うな)るパートが織り込まれ、ときに伴奏、ときに合いの手のように、三味線が入り込んでくる。これも一瞬で「浪曲らしさ」が伝わる。

それらに比べて「落語らしさ」は、いかにおぼろげなことか。

重鎮の師匠みたいに見た目に説得力があって、声に年輪が感じられるところまでいけば、それだけで落語らしさはにじみ出るかもしれない。でも僕はまだそのレベルに達していない。細かいことを言うと、左右の首の切り方とか言葉のつなぎ方とか発声とか、随所に落語ならではの技術は存在するけど、それは一瞬で「落語らしさ」をだれもに伝えられるものではない。

せっかく落語家として誰かに必要とされているのだから、胸を張って現場に行きたい。そのためには「これが落語です」と明確に言える何かを、しっかり自分で見つけなくちゃいけないだろう。異なるジャンルとのコラボが、自分の足元を再確認するための契機になってくれている。

立川吉笑
本名は人羅真樹(ひとら・まさき)。1984年6月27日生まれ、京都市出身。京都教育大学教育学部数学科教育専攻中退。2010年11月、立川談笑に入門。12年04月、二ツ目に昇進。軽妙かつ時にはシュールな創作落語を多数手掛ける。エッセー連載やテレビ・ラジオ出演などで多彩な才能を発揮。19年4月から月1回定例の「ひとり会」も始めた。著書に「現在落語論」(毎日新聞出版)。

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