老後の安心は2000万円+家 30~40代独身の選択
知って得するお金のギモン
金融庁の審議会報告書に端を発した「老後資金2000万円問題」。将来が不安になった人もいるのでは?
報告書にある「老後資金は2000万円必要」の根拠は、2017年に総務省が実施した家計調査による、夫65歳以上、妻60歳以上の高齢夫婦無職世帯の1カ月の平均収支です。「毎月約5万円の赤字」という調査結果を基に、95歳まで生きると仮定すると、65歳からの30年間で不足額は2000万円近くに上ります。
データは平均値ですから、必要な老後資金は人によってさまざま。それでも年金生活を想像する上での「目安」になります。
さて、今回注目したいのは「老後の住居費」。同調査の住居費は、月平均1万3656円。少なくてびっくりですね!
この住居費とは、家賃やマンションの管理費・修繕積立金などの平均値。住宅ローンの返済額は、不動産という資産を得るための借入金と見なされるので、住居費には含まれません。ですから、約1万4000円の住居費は、65歳以降も住宅ローンの返済が残る人や賃貸住まいの人に、ピタリとは当てはまらないのです。そのため、「毎月の収支赤字約5万円」に加えて、月約1万4000円を超える分のローン返済額や家賃支出を見込む必要があります。
「ローン返済期間は65歳まで」ルールを厳守
60歳以降も働くとしても、50代と同程度の収入を期待できないのが現実。まして、年金だけの収入になると、家賃の支払いやローン返済はさらに重くなります。
老後のためにマイホームを購入したいと考えるなら、「住宅ローンの返済期間は長くても65歳まで」というルールを守るのが、老後貧乏にならない秘訣。本当は「ローン返済開始年齢から60歳まで」を返済期間としたいのですが、これだと毎月の返済額が多くなりすぎて、現実的なプランが立てにくくなるので「65歳」としています。
そうすると、60歳時点で残り5年分ですから、それほど多額の残高にはなりません。60歳のときに、貯蓄や退職金で一括返済できるかも。もしくは、退職金には手をつけず、60代前半はしっかり働いてローンを返済する対処法もあります。
住宅ローンは返済期間を長くするほど、毎月の返済額は少なくなります。返済期間は最長35年ですから、住宅購入時には「35年返済で毎月の返済額を少なくし、途中で繰り上げ返済するといい」といわれることが多々あります。
しかし、老後資金をためながら、繰り上げ返済をするのは誰もができることではありません。子供がいれば、教育費の出費も大きな負担となります。
繰り上げ返済を見込まずに、返済期間を65歳までとする。こうして求めた毎月の返済額が自分の収入に対して多くなりすぎるなら、それは借入額が身の丈を超えているというシグナル。物件の予算を見直したり、頭金を増やしたりと、マイホーム購入を冷静に再考する必要があります。
30代シングルで「このままシングルだと老後が不安」と、マンション購入を急ぐ人もいますが、焦りは禁物。
アラフォーですてきな結婚をするケースも増えています。40代になり、「やっぱりマンションを買おう」と思ったときに頭金を十分に出せるように、貯蓄をしておくのがいいでしょう。
シングルで年金生活を迎えたとしても、姉妹や仲の良い友人と、賃貸物件をルームシェアし、家賃負担を軽減するプランだってありますよ。
今回の回答者
ファイナンシャルプランナー。株式会社生活設計塾クルー取締役。外資系電機メーカー勤務を経て、1996年にFPに転身。現在は、特定の金融商品を販売しない独立系FP会社生活設計塾クルーのメンバーとしてコンサルティング業務を行うほか、雑誌等の原稿執筆、講演などを手がける。近著は「サラリーマンのための『手取り』が増えるワザ65」(ダイヤモンド社)。
[日経ウーマン 2019年9月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。