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米国ではありえない? ハンバーグ、日本独自の進化

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NIKKEI STYLE

日本人の好きな食べもののランキングで上位に入るであろうハンバーグ。欧米にルーツがあると思っている人は多いと思うが、実は米国にはハンバーグが存在しない。ハンバーガーはよく食べるが、ハンバーグを単体で食べることはないのだという。

私がそれを知るキッカケとなったのはある夏の日のこと。天気がいいので庭でBBQをしようということになった。私が「じゃあ、焼き肉用のお肉と野菜を買ってくればいいかしら?」と夫に聞くと、彼はこう答えた。

「は? BBQといえばハンバーグを焼くに決まってるだろ!」

えっ、そうなの? 私はちょっと驚いた。それまで私が参加したBBQではスライスされた肉や野菜を炭火で焼いて焼き肉のタレなどで食べることが多かった。しかし、米国に長年住んでいた夫によれば、BBQといったらハンバーガーパティを焼き、バンズにはさんで食べるのがキマリなのだという。

「じゃ、ひき肉を買って、タマネギをみじん切りにして、パン粉を牛乳にひたしたものとかを用意しておけばいいかな?」。ハンバーグの基本的なレシピを頭に思い浮かべながら再び尋ねた。

「は? そんなもの要らないよ。牛ひき肉に塩・コショウで味付けして、1つにまとめて焼くだけだから」

えっ! そうなの? この日2度めの驚きである。家庭科の授業や料理番組ではハンバーグといえば、タマネギやパン粉のほか卵や小麦粉など、いわゆる「つなぎ」を入れるものだと教わってきた。

この日の2つの驚きについて、米国食肉輸出連合会(USMEF)の土方多寿子さんに確認してみた。

「米国のBBQではハンバーガーパティを焼きハンバーガーを食することも多いです。パティは牛肉100%がほとんど。シーズニングは加えますが、つなぎを使わないのが一般的です」

よくよく思い出してみると、米国発の有名ハンバーガーチェーンのテレビCMでも「ビーフ100%」とうたっていたっけ。日本の家庭ではハンバーグは牛と豚の「合いびき肉」で作られることが多い。だから私は、「ビーフ100%」というのは使うひき肉の中での割合が牛肉が100、豚肉がゼロなのだと解釈していた。が、これは豚肉はもちろん、野菜もつなぎも一切使わずに牛肉だけで作るという意味だったのか、と初めて気づいた。

ちなみに「合いびき肉」も米国のスーパーには存在しないという。

「つなぎのある、なし」「合いびき肉か、牛肉100%か」以外に日米のハンバーグの違いはあるかと尋ねると、さらにこんな驚きの回答が返ってきた。

「米国ではハンバーグ(ハンバーガーステーキ)という食べ方はございません。パンにはさんで食べるのが一般的。つまり、ハンバーガーとして食べています」

な、なんと! お皿にハンバーグとつけ合わせの野菜がのっていて、ナイフとフォークで食べる、あのスタイルはないの!? 米国発のファミリーレストランの定番メニューだと思っていたのに、実は存在しないなんて!

「ですから、『ハンバーグ』という単語は米国では使われておりません。『ハンバーガーパティ』もしくは『パティ』という言い方が一般的です」と土方さん。

英語で「Hamburg」といえばドイツの町、ハンブルクのこと。どうやら「ハンバーグ」は和製英語らしい。野菜やつなぎが入った日本式のハンバーグは米国では「ミートローフ」が近いという。

ここでハンバーグの歴史をひもといてみよう。その起源は諸説あるが、モンゴル帝国の「タルタルステーキ」が原型という説が有力だ。13世紀、東ヨーロッパに攻め込んだモンゴロイド系の騎馬民族のタタール人は遠征の際、乗り潰した馬を食料にしていた。こうした馬肉は筋張っていて非常に硬いため、細かく切って食べやすくする工夫がなされた。また、臭みを消すために、タマネギやコショウなどのスパイスで味付けされた。これがタルタルステーキである。

16世紀にこれがドイツのハンブルクに伝わると、安くて硬い肉しか手に入らない労働者階級の間で大流行。衛生面から生ではなく火を通して食べるようにもなった。やがて18世紀にハンブルクから多くのドイツ人が米国に移住するようになって、彼らが食べている牛肉のタルタルステーキのことを米国人が「ハンブルク風ステーキ(=ハンバーガーステーキ)」と呼ぶようになったという。

そして、ハンバーガーステーキは合理的な国民性の米国人によって片手で食べられるスタイルへと進化していったのではないだろうか。ハンバーグならナイフがなくても容易にかみ切れるので、パンではさんでも食べやすい。

合理的といえば、冒頭で紹介した夫が仕切ったBBQではまな板も包丁も使わず、ひき肉をこねるボウルも不要だった。スーパーで買ってきたトレイからひき肉を手にとって丸め、網に乗せただけ。作る工程もシンプルだし、ハンバーガーを載せる皿さえも不要で、洗い物がほぼないことに気づいた。

前出の土方さんによれば、米国では「季節のいい時期は、休日だけでなく、夕食は毎日バックヤードのグリルで調理する方もいます。肉を焼くのは男性がほとんどで、女性はサイドディッシュのサラダなどを担当しています」とのこと。米国のBBQ定番メニューにハンバーガーが選ばれているのは、ほぼ毎日のことだけに調理の簡単さや片付けのラクさが好まれているのかもしれない。

さて、ハンバーグが日本で最初に公に紹介されたのは明治15年(1882年)。赤堀料理学園の前身、日本初の料理学校である赤堀割烹教場の開校記念の式典でふるまわれたとのこと。

「初代校長の赤堀峯吉がどのようにハンバーグに出合ったのかは定かではありません。ただ、料理学校の前に料理店をやっていて、そこのお客様がセレブな方々だったので、西洋料理についても知識があったのではないかと推測されます」と語るのは赤堀料理学園第6代校長で日本フードコーディネーター協会常任理事の赤堀博美さん。

当時のレシピは、タマネギこそ入るものの、小麦粉などの「つなぎ」を使わないものであったとか。

「肉には塩を加えてこねることで結着する、つまり肉と肉がお互いにくっつく性質があります。ですので、『つなぎ』がなくてもパティになります。現在のようにハンバーグにパン粉や小麦粉を入れるようになったのは肉と肉をつなげるというよりも『かさ』を増やすためではないかと思います。牛肉だけでは価格も高いので、ほかのものを入れて安くて食べやすいようにしたのではないでしょうか」

日本では合いびき肉が使われることが多い理由についても聞いてみた。

「日本で肉を食べるようになったのは明治5年から。明治15年の開校記念日にハンバーグを炭火で焼いたときにも近所から『臭い』と苦情が来たそうです。そのくらい当時の日本ではまだ肉食に抵抗がありました。そこで臭みの少ない豚を混ぜたのではないかと思います。また、豚肉を加えたほうがジューシーでうま味が増えておいしく感じたのかもしれないです」

豚肉にはうまみ成分として知られる「イノシン酸」が牛肉よりも多い。臭みを消してうまみを増すための工夫として合いびき肉が生まれたのだろう。

牛肉100%にこだわらない「かさ増し」の精神は豆腐ハンバーグなどのアレンジを生み出した。ソースもトマトやウースター、デミグラスなどのほか、おろしポン酢や照り焼きなどバリエーションも豊富だ。もはやハンバーグは「和食」と言えるのかもしれない。

(ライター 柏木珠希)

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