生徒の価値観揺さぶる 国際高ISAK、力育む多様性UWC ISAKジャパン 小林りん代表理事(4)

ロールプレイングで得る「気づき」

「戦争などを取り上げるときも、いろいろな国の教科書を読みます。たとえば、ほかの国で慰安婦問題についてどう教えられているかを知ったうえで、みんなで議論するんです。そういう体験から世の中の情報はすべて一つの側面にすぎず、何か欠けている部分があるのだと学び取ってくれるように期待しています」(小林氏)

「多様性へのアプローチの仕方を授業で鍛える」と話す小林りん氏

多様な視点を大事にする姿勢は、自然科学の分野でも同じだ。たとえば、遺伝子の授業では、こんな議論があったという。

遺伝する病気を持つ2人が結婚し、体外受精で子どもを授かろうというケース。この場合、受精卵の染色体検査をすべきか否か、染色体異常が見つかった受精卵を排除するのかどうか――。小林氏は「この議論には、生命は受精卵から始まるのか、出産を経てなのかという観点もありますし、中絶の問題にもつながってきます。家族、医師、政府といった立場の違いで問題の見え方は異なるし、キリスト教、仏教など宗教の背景によっても考え方は違ってきます」と話す。

割り振られた立場になって調べ、考えながら議論するロールプレイングで、生徒たちは「自分の当たり前と、他の人のそれは違う」と気づく。多くの科目で、そうした気づきに出合えるようにするのが、UWC ISAKの仕掛けだ。小林氏は「自分と違うから分かり合えないと否定せず、なぜ相手はそう考えるのかという価値観の源に立ち返る。すると、何か接点が見つかり、話し合えるようになります。そうした多様性へのアプローチの仕方をさまざまな授業でトレーニングするのを大事にしています」と強調する。

生徒全員が入る寮での生活も多様性に満ちている。ある寮では「共同キッチンの流しがいつも汚れた食器でいっぱい」という問題が発生。生徒たちが話し合い、「流しに放置された食器1個につき、全員が10円ずつ『罰金』を払う」というルールが提案された。これに対し、ある生徒は「自分の親の年収は数万円だ。文房具や日用雑貨などの必需品でさえ、学校から支給される月2000円のお小遣いを何とかやりくりして買っている」と罰金のきつさを訴えた。