鳳蘭さんの輝き お客さまの笑顔が大好き(井上芳雄)第49回

日経エンタテインメント!

『愛あればこそ』をデュエットする鳳蘭と井上芳雄(写真提供/東宝演劇部)

一方で、繊細さもお持ちです。それを感じたのは、『ベルサイユのばら』から『愛あればこそ』をデュエットさせていただいたとき。歌っている最中は、僕の目をしっかりと見て気持ちを伝えてくれて、ブロードウェイのスターと歌っているみたいでした。そして、歌い終わったら「私の息にあわせてくれて、すごく歌いやすかった」と言っていただきました。「私がいつも人にあわせるほうだから、よく分かるの」とも。

鳳さんは華やかで前に出ていくタイプの女優さんではあるけど、一緒に歌ったり、演技している人のことをすごく気にしていることが伝わってきました。いろんな方が鳳さんのことを、とても繊細なところがある、と言われるのですが、僕もそれを感じました。大胆さと繊細さが共存しているのが鳳さんの魅力。それはスターの条件でもあるのでしょう。

歩みを止めることのない人生

トークショーが終わった後、打ち上げで乾杯してお話しさせていただいたときに、印象に残った言葉があります。「鳳さんたちの時代のスターは個性が強いし、濃いですよね。それが今は、自分も含めてかもしれないけど、どこか押し出しが弱かったりして、薄味になっている気がしませんか」と聞いたところ、こんな答えが返ってきました。 

「私たちの時代にも、薄味の人はいっぱいいたのよ。それはいつの時代も同じ。今も残っているのが、個性の強い人たちだというだけのこと」。その言葉からは、時代を超えて生き残ってきたという強い自負が伝わってきましたし、それを成し遂げるだけのバイタリティーも感じました。僕は目を見開かされた思いで、歩みを止めることなくひとつのことをやり続けることのすごさや大事さを感じ、自分もそうありたいと願いました。

井上芳雄
1979年7月6日生まれ。福岡県出身。東京藝術大学音楽学部声楽科卒業。大学在学中の2000年に、ミュージカル『エリザベート』の皇太子ルドルフ役でデビュー。以降、ミュージカル、ストレートプレイの舞台を中心に活躍。CD制作、コンサートなどの音楽活動にも取り組む一方、テレビ、映画など映像にも活動の幅を広げている。著書に『ミュージカル俳優という仕事』(日経BP)。

「井上芳雄 エンタメ通信」は毎月第1、第3土曜に掲載。第50回は8月17日(土)の予定です。

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