
――松島トモ子さんのCMが印象深いです。
そうですね。しかし、実はCMの初代は江利チエミさんでした。江利チエミさんは当時たいへんな人気で忙しい方でしたから、オファーしても無理だろうと思われたのですが、すでに実際に愛用してくださっていたことからトントン拍子に話が進んで出演してもらえることになりました。
ところが、その2年後ぐらいの1982年に急逝された。それからのCMをどうするかを考えたときに浮上したのが、松島トモ子さんにお願いしようということでした。以前放映されていた江利チエミさん主演の実写版「サザエさん」で、ワカメちゃん役だったのが松島トモ子さんだったのです。そうしたことから、松島トモ子さんならイメージを継承できるだろうということでお願いしたのでした。
――今は麦茶のほかに各種の健康茶も手がけていますね。
これには人口動態の変化が背景にあります。麦茶をたくさん消費するのは、小中学生の子供がいる世帯なのです。ところが、少子高齢化でこの市場はすでに80年代から縮小し始めていました。そこで、今度は高齢層に対応する必要が出てきたわけです。そこで、中高年の方向けに支持される健康茶をいろいろ調べながら展開しています。
――健康茶での売れ筋はどの商品ですか。
健康茶ではごぼう茶がいちばん多く売れています。味では特に女性には支持をいただいていて、水溶性の食物繊維が摂りやすいという点がセールスポイントになっています。女性の方が健康について敏感ですから、ごぼう茶の売り上げ増に貢献してくれているのですね。ちなみに中国でもごぼう茶はポピュラーですが、男性が強壮剤のような飲み方をしているらしいですよ。
――健康茶は、ほかにもさまざまなものが折々に紹介され、御社でもほかの健康茶も扱われています。そのなかでとくにごぼう茶が成功したのはなぜなのでしょうか。
話題があったことと、そのタイミングで当社で量をそろえることができたことです。ごぼう茶が特に売れ出したきっかけとしては、2010年ごろですが、アンチエイジングなどで有名な医師の南雲吉則先生が薦めているということで話題になり、ブームが起こりました。
そして、当社ではちょうどこのタイミングで量を供給できたことが成功につながりました。ごぼう茶には特に皮の部分が原料となるのですが、ゴボウを食材として扱っているメーカーから、食材にはあまり使わない皮の部分を安定的に仕入れることができることになったのです。
――今後の健康茶の開発を考える上でポイントとなることはどんなことでしょうか。
目新しい新素材よりも、食経験のあるものがお茶になる形が有望です。まず、やはり食べたことがないものというのは、なかなか市場に受け入れられにくく、半面、食べたことがあるものなら受け入れられやすい。
また、食品としてすでに扱われているものであれば、ごぼう茶の場合のように、全くの新素材よりも原料調達がしやすいですから。
――少子高齢化、グローバル化と社会環境が激変する日本で、石垣食品は食におけるリーダーシップをどう発揮していくのか、次回お聞きします。
1961年東京生まれ。85年慶応義塾大学商学部卒業、同年石垣食品入社。98年社長就任、現在に至る。実はB級グルメを自認。会社の近所の安くておいしいランチスポットを探して社員にも紹介。文京区の自宅から飯田橋のオフィスまで電車で出勤するが、帰路は徒歩。おいしい店を探しながらの散策が日課になっている。
(香雪社 斎藤訓之)