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ヒットを狙え

八方尾根でぜいたくなアウトドア体験 スノーピーク

日経クロストレンド

2019/8/21

料金設定は特定の顧客層のニーズや競合他社との比較ではなく、その土地に最もふさわしい「体験」を提供するために必要なコストから算出したという。「料金は事業モデルや提供する内容、場所によって変動はある。(同種のサービスを)そのまま他の地域に横展開するのではなく、新たな場所で一からカスタマイズしていくイメージ」(スノーピークの山井梨沙副社長)。

スノーピークの山井梨沙副社長(写真:酒井康治)

■「モノからコトへ」に対応する

FIELD SUITEの事業構想自体は13年ごろから練られていた。スノーピークの山井太社長が16年10月に家族で白馬・八方尾根を訪れた際、その環境にほれ込んで八方尾根開発の倉田保緒社長に声を掛けたのがきっかけだ。

国内有数のスキーリゾート地である白馬・八方尾根は、近年のインバウンド需要の高まりから冬場の利用者数は回復傾向にある。しかし日本人利用者の減少は続いており、インバウンド需要もいつまで続くかは未知数だ。そうした事情もあり、倉田社長も春から秋のグリーンシーズンの集客対策を模索していた。

「山井社長は、『我々はメーカーでもともと食器や鍋を作っていたが、これからはモノからコトへ』とおっしゃった」と倉田社長。当時、「スキー場だけではやっていけない。スキーが良い悪いではなくて、自分たちが成長できるものが他にないか」と考えていた倉田社長と、山井社長の「モノからコトへ」の方向性が重なり合った。

八方尾根開発の倉田保緒社長(写真:酒井康治)

山井社長から「スノーピークの共同事業者として、白馬・八方尾根高原で新しいブランド価値を提供するグランピングの宿泊施設を一緒に作ってほしい」と提案を受けた倉田社長は、すぐに同意した。

こうして「FIELD SUITE」の事業計画がスタートした。

17年秋、ポップアップの実証プログラムを開始。スノーピークは仮設テントで1泊12万円の客室を3日間限定で販売した。その5カ月後、宿泊なしで雪上アクティビティーを開催する冬期プログラムも実施。18年には2回目となる秋の実証プログラムを行い、好評を博した。

焚き火バーでは客同士、そしてスタッフとの交流が図れる。飲み物はすべて料金に含まれている(写真提供:八方尾根開発)

これらテストの結果を踏まえ、スノーピーク初の常設宿泊施設となるSnow Peak FIELD SUITE HAKUBA KITAONE KOGENのオープンにこぎ着けた。白馬・八方尾根地域のブランド力向上にもつながる今回の事業は、地方交付金などの公的資金の援助は受けず、スノーピークと八方尾根開発の取り組みで実現させたという。

■事業展開する地域は社長の感性で決める

今後、スノーピークが他の地域でFIELD SUITEを展開する場合、豊かで魅力的な自然を有していること以外、どのような条件が必要なのか。同社では数値データなどの明確な社内基準を作ることも検討しているが、「山井社長が自分の感性で『そこに行きたい』という直感的な部分を大事にしている」と山井副社長は説明する。

スノーピークはこれまで自然の中で人と人が本質的につながる体験価値の提供を目指してきた。これからは常設宿泊施設や周囲のロケーションといったベース(拠点)を生かした体験開発に注力することで、総合的なアウトドアライフの価値を提案していくという。

「その価値の中でも『フィールドの中のスイートルーム』として、この白馬の施設が最高峰の体験になっていくはずだ」と山井副社長は期待する。

白馬・八方尾根でも前例のないこの施設にとって、何より肝心なのは天候に恵まれることだろう。八方尾根開発の担当者によると「植物の芽吹くゴールデンウイーク明けから梅雨入りまでは天候も安定し、残雪のある山々が美しい。そして秋雨が終わった後の紅葉シーズンがお薦め」とのことだ。

夜は満天の星が存分に楽しめる(写真提供:八方尾根開発)

(ライター 丹野加奈子)

[日経クロストレンド 2019年7月17日の記事を再構成]

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