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実り始めたスマート農業 産地格差や価格下落に課題

2019/7/30

スマホで売れ行きをチェックできる農産物や卵の自販機(川崎市の河崎養鶏園)

農業の現場に、情報通信技術(ICT)やロボットといった最先端の技術を導入する「スマート農業」が徐々に花開いています。政府は「農業の生産性を飛躍的に高める起爆剤になる」と強調しますが、過度な期待は禁物だとの声もあります。

スマート農業に注目が集まる背景には、農業での深刻な労働力不足があります。農林水産省によると、農業就業人口は2010年時点の260万人から、18年に175万人まで減りました。一方、農業を営む一つの経営体当たりの耕地面積は10年の2.2ヘクタールから18年に3.0ヘクタールに拡大し、1人当たりの作業面積が増えています。高品質な商品を効率よく生産し、競争力を高めなければ生き残れないのは、農業も他の産業と同じです。

自治体も先端技術の導入を促しています。例えば、川崎市は市内で創業したIT(情報技術)ベンチャー、ルートレック・ネットワークスと、市内の明治大学黒川農場を仲介しました。同社の技術を農業に応用するプロジェクトが実を結び、水や肥料の分量を自動管理する「ゼロアグリ」システムを13年から出荷しています。

流通にも変化が出てきました。農園からの提案を受けたIT企業が、野菜の売れ行きをスマートフォンで確認できる自動販売機を開発し、川崎市内で設置が進んでいます。

川崎市・都市農業振興センターの赤坂慎一所長は「商工業、大学などが集積し、生産者と消費者の距離も近いのは都市の強みだ。農業との多様な連携を促し、都市農業の可能性を広げたい」と話します。先端技術の効果は耕作面積が広いほど出やすい傾向があり、都市部で生まれた農業技術が他地域で活用され、生産性の向上に貢献する事例も増えています。

スマート農業は全国に広がるのでしょうか。明治大学の竹本田持教授は「労働力不足や高齢化への対応という面で、ある程度の可能性や実現性はあるが、全体に普及するかどうかは疑問」と指摘します。先端技術の導入には相応のコストがかかるうえ、天候を見ながら水や肥料を供給する過程に農業の楽しみがあり、極端な自動化を望まない農業者も多いとみています。

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