急増する「サブスク」 よくある誤解と成否の分かれ目
『サブスクリプション2.0』寄稿者に聞く
デジタル戦略コンサルタントの●(いとへんに卆)川(かせがわ)謙氏
「ロボット掃除機のルンバが月額1200円のサブスクリプションサービスを提供」「LINEのスタンプもサブスク開始、月額240円で使い放題に」――。消費者が定期的に決まった料金を支払うと、規定内のサービスを自由に利用できる「サブスクリプション」というビジネスモデルが注目を集めている。電話の通話料などで古くから採用されているが、ここ数年で参入企業が急増、「サブスク」という略称も広く使われるようになった。
しかし、導入した現場では『計画通りにいかない』などの声が上がり、サービスの見直しや撤退をする企業も少なくない。そこで、24社の最新事例を収録した日経クロストレンド編『サブスクリプション2.0 衣食住すべてを飲み込む最新ビジネスモデル』(日経BP)に特別講座「サブスクリプション成功のための5つの要点」を寄稿した、デジタル戦略コンサルタントでCustomerPerspective代表のかせ川謙氏を訪ね、「サブスクにまつわる誤解とその本質」について聞いた。
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トヨタのスピード参入で脚光、「買っても借りてもいい」
『サブスクリプション2.0 衣食住すべてを飲み込む最新ビジネスモデル』
――最近、サブスクリプションという言葉をよく目にするようになりました。
「グーグルでサブスクリプションをキーワードとした検索数を調べてみると、2016年を境に急増しています。様々な企業がこのサービスを手掛けるようになり、メディアなどで取り上げられる機会が増え、それがまた関心を呼ぶ。検索数は19年時点でも前年比で約2倍と大幅に伸びています」
「今年2月にはトヨタ自動車が『KINTO』をスタートさせ、注目を集めました。必要な時にすぐに乗れて、思うままに移動できる『筋斗雲』の世界観をイメージしたサービスで、トヨタの新車が月額料金で乗れるというもの。例えばプリウスなら、月額4万9788~5万9832円(税込み)で3年間、乗り続けることができます」
「消費者が自動車を購入せずにリース形式で利用できるKINTOは、これまでトヨタの売り上げを支えてきた販売事業を圧迫しかねないようにも見えます。しかし、豊田章男社長は『トヨタはクルマをつくる会社から、モビリティに関わるあらゆるサービスを提供する会社、すなわちモビリティカンパニーに変革する』と宣言しています。同社としては自動車を売ることにこだわるのではなく、借りてもらってもいいわけです」
「日本を代表する大企業が準備期間わずか1年で、自らの変身の決意を示すかのように参入に踏み切ったことで、サブスクビジネスはさらに脚光を浴びることになりました」
売ったら終わり、ではなく顧客と「つながり続ける」
――基本的に、サブスクリプションとは「月額で使い放題」のサービスという理解でよろしいですか?
「確かに、月額料金で商品やサービスを自由に利用できるモデルが多いので間違いとは言えませんが、もう少し広い概念で捉えておきたいですね」
「サブスクリプションとは英語で『サブ(下に)スクライブ(書く)』という言葉が元になっています。契約書の下部に『署名』すること、つまり当事者がお互いに約束するということです。私はサブスクリプションの本質とは、『サービスの提供者と受益者が継続的な関係を約束する』ことにあると考えています」