脂肪は、体がいざというときのためにとっておくエネルギー源。気になる部分のトレーニングをしても、そこについている脂肪が優先的に使われるということはない。そして、脂肪を燃焼しやすい体にするためには、筋トレによって筋肉量を増やし、基礎代謝を上げておくことが大切だ。
「実は、筋肉量を増やすことが目的ならば、二の腕周辺やおなかの筋肉をトレーニングしても効率が悪いのです。下半身にある大きな筋肉をトレーニングで動かしたほうが、ずっと速く筋肉量を増やすことができます」(中野さん)
テレビでよく見る健康法が正しいとは限らない
【誤解4】一つ手前の駅で降りて歩いています。これは、やらないよりはよいですよね?
「テレビなどで、健康のために一つ手前の駅で降りて歩きましょう、と呼びかけているためか、これを実践している人は意外と多いようです。『やらないよりはよいですよね?』という質問を受けることがあるのですが、私は『やらなくていいですよ』と答えています。なぜかというと、これで『自分は運動している』と勘違いしてしまっては困るからです」(中野さん)
歩くという行為は、普段の生活とあまり変わらない。一つ手前の駅で降りて普通に歩いたとしても、筋肉への刺激が少なく、消費カロリーもそれほど多くない。もし、通勤中に一つ手前の駅で降りて歩くことを運動にするならば、ウォーキングシューズに履き替え、少し息が上がる程度の早足で歩かなければならない。
「一つ手前の駅で降りて歩く」のように、よかれと思ってやっているのに、負荷が低くて効果が薄い運動はたくさんある。中野さんは、そうしたものを「運動してるつもり」と呼んでいる。健康のためには、この「運動してるつもり」を解消して、筋肉に刺激が入るような運動を行わなければならないのだ。
【誤解5】運動すると疲れてしまうのが嫌です
「運動すると疲れるのが嫌だという人がいますが、運動は疲れるからこそ健康につながるのです」と中野さんは力説する。その理由は、世の中が便利になってきて、日常生活で疲れる機会が減っているからだという。
「私が初めて運動生理学を学んだ30年前と比べると、生活の中で体を動かすことが減ってしまいました。以前であれば、報告書を1枚出すのに、紙を上司のところに届けていましたよね。勉強や調べ物をするにしても、図書館に行って本を探さなければいけませんでした」(中野さん)
今や仕事の連絡もほとんどがメール。買い物も、パソコンやスマートフォンで注文すれば、自宅に届く時代だ。
「これからリモートワークが普及すると、日常生活の活動量がさらに低下する恐れがあります。確かに、満員電車に乗らないで済むのはメリットかもしれませんが、一日のほとんどを椅子に座ったまま過ごして、食事もネットで注文して、誰とも会わずに会話もしないなどということになったら……。これでは、生活習慣病やうつ病が心配になります」(中野さん)
ヨガだけでは健康にならない!?
【誤解6】健康のための運動として、ヨガをやっています
運動というと「ヨガ」を思い浮かべる女性も多い。ただ、中野さんによると、ヨガでは筋トレや有酸素運動の代わりにはならないという。