「授業を終えて教室から出たら、いきなりキャリア・センターの人が待ち構えていてびっくりした」。東京女子大の就活生の間ではそんな話がささやかれている。
同大学では、就活時には担当者が一人ひとりに進捗状況を確認し、それぞれの志望に応じて企業紹介などのアドバイスをする。連絡の基本はメールではなく電話だ。どうしても連絡がつかない場合は「出ている授業の終わりに話しかけて接触する」(森田光則キャリア・センター課長)という熱の入れようだ。
東京女子大で細やかな支援が可能なのは、そもそも学生数が少ないためだ。同大学は1学年1000人程度で、森田課長は「この規模だと、頑張れば何とか一人ひとりの就活に目配りできる」と話す。
日本女子大でも1500人程度、津田塾大は800人程度、国立のお茶の水女子大に至っては500人程度と高校とあまり変わらない。数千人規模となるMARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)や関関同立(関西、関西学院、同志社、立命館)といった共学の有名私立大学などと比べると学生数が格段に少ないことが強みとなっている。
実際、東京の私立御三家といわれる津田塾、東京女子、日本女子大の2018年度卒の就職率(就職希望者に占める就職者の割合)は軒並み99%程度と大学平均の97・6%(文科省調べ)を上回る。昭和女子大学も近年上昇しており、3年連続で99%を超えている。
OGとの緊密なつながりで豊富な企業データを蓄積
少人数だけにOGとのつながりは緊密で、就職先企業のデータが充実している。このため、学生にはなじみの薄いBtoB(企業間取引)主体の企業にも目配りしやすいようだ。
例えば昭和女子大学では「精密加工装置のディスコや信越化学工業など化学会社が人気」(磯野彰彦キャリア支援センター長)。津田塾大は18年度の卒業生のうち、一般的には知名度の高くない港湾運送の二葉(東京・港)に4人就職し、全体の就職先の6位につけた。学生生活課の斉藤治人課長は「通関手続きなどで英語のスキルを生かしたいと考える学生は多い」と話す。
実は、企業が大学に送る求人票も女子大ならではの特徴がある。原則として、求人票で性別を指定することは法律で禁じられている。企業が共学に求人票を出す場合、「本当は男性が欲しくて女性を採用する気はない」ケースも想定できる。女子大の求人票は採用意図が明確なため、就活で無駄足を踏まないで済む。