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世界最難関ミネルバ大で育つリーダー 決断力の導き方 『最難関校ミネルバ大学式思考習慣』 山本秀樹氏

2019/7/17

大学での学び方は多様化している。写真はイメージ=PIXTA

新発想の「ミネルバ大学」が評価を高めている。日本のビジネスパーソンが入学するのは難しいが、運営や学びの手法を仕事に生かすことはできそうだ。『最難関校ミネルバ大学式思考習慣』(日本能率協会マネジメントセンター)を書いた山本秀樹氏は「ミネルバ大はオンライン授業だけではなく、ありよう自体がビジネス的な示唆に富む」という。入学せずに「ミネルバ流」に触れる方法を教わった。

【ミネルバ大学(Minerva Schools at KGI)とは】
運営母体は、米国の著名起業家だったベン・ネルソン氏が「既存の大学のあり方を刷新する」ことを目的として2012年に設立した「ミネルバ・プロジェクト」。21世紀のグローバルリーダーを育成することが教育の主眼だ。
「校舎はなく世界7都市を移動しながら学ぶ全寮制」「講義は禁止、テストは廃止」「授業は全てオンラインのディスカッション」「80%が留学生」といったユニークな運営方法でも知られる。不確実なグローバル社会で成功するために必要不可欠な「知性」「個性の構築」そして「実践的な能力」を身につけるためのカリキュラムが組まれている。

■キャンパスも研究施設もない大学

まず、ミネルバ大の基本的な仕組みをつかんでおこう。主な特徴は、既存の主な大学が備えてきた設備や機能を持っていないところにある。たとえば「キャンパスがない」「研究設備がない」。どちらもコストがかさみ、ローコスト運営を妨げる。米国では大学生が背負う学費ローンの重さが社会問題化している。ゼロから立ち上げたミネルバ大の場合、そうした固定費の足かせから解放されている点が運営面での強みだ。授業はオンラインが基本となる。

だが、「むやみに固定費を削っているのではない」(山本氏)。大学の生命線と言える教授陣やカリキュラムでは高いクオリティーを誇り、固定費を減らした分、学費も抑えている。年間1万3000ドル余りという、ミネルバ大の学費は米国の有力私立大より格段に安い。つまり、「高品質で低価格」だ。誰でも分かりやすいメリットと、筋の通った説明が納得感や共感を生む。運営体質に透明性が欠けるとされる大学経営に、ミネルバ大は風穴を開けた。

日本連絡事務所代表を務めた山本氏は「広告費もゼロ。とにかくコストをかけない」という。日本連絡事務所の活動費は、大部分を自前で負担したそうだ。その期間は2年に及んだ。英ケンブリッジ大学に留学した経験を持つ山本氏は、いさぎよいまでに無駄を省いたミネルバ大の運営スタイルに驚きを覚えたようだ。無駄なコストをかけないと決めるところから逆算的に運営スタイルを組み立てる手際は、「宣伝費がないから」というありがちな言い訳を陳腐にみせる。

■自薦で日本事務所代表に就任

半面、「(コストをかけない無料の)プロモーションはとても巧み」(山本氏)。メディアや支援者の力を借りて、2014年の創立からわずか5年で、世界的な評価を確立しつつある。高い志や斬新なアプローチが評判や支援を呼び込んだ。ゼロからのスタートだから、余計なしがらみとも無縁だ。新規事業を立ち上げる場合でさえも、既存商品との競合や、減価償却との兼ね合いがくびきになりがちな「日本的新規プロジェクト」でも参考にしたい、本当の意味での「垂直立ち上げ」だ。

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