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海の廃プラのみ込むサンゴ 餌より好んで死招くことも

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/7/15

アルテミアの卵かマイクロプラスチックか――2つの選択肢を与えられたポリプは、すべてがアルテミアの卵よりマイクロビーズを2倍近く摂取した。栄養価のないマイクロビーズで空腹が満たされると、ポリプたちはアルテミアの卵を食べることもやめた。

カリフォルニア州サンディエゴにある米海軍太平洋情報戦センターの科学者で、今回の研究に参加したジェシカ・カリリ氏は「この結果は、とてもショックでした」と話す。「触手が届く範囲に浮かぶ粒子を仕方なく受動的に食べているのではなく…残念ながら、本物の餌よりプラスチックを好んで選んで摂取したのですから」

2015年、米国政府はマイクロビーズの使用を禁止することを決定した。それでも、すでに自然へと流れ出たマイクロビーズは、他のプラスチックと同様、今後数世紀、海洋に漂い続け、サンゴを脅かすことになるだろう。

■マイクロビーズが病気を媒介

研究室では、海水にマイクロビーズを入れ、細菌がつくる膜であるバイオフィルムを付着させることもしてみた。チームの一員であるコティー・シャープ氏によれば、マイクロプラスチックのほとんどに細菌が付着していると考えるべきだという。シャープ氏はロードアイランド州のロジャーウィリアムズ大学でサンゴの微生物を研究している。今回、バイオフィルムの形成に使われたのは、一般的な腸内細菌である大腸菌だ。追跡しやすいよう蛍光グリーンに染色している。

実験の結果は次のようなものだった。マイクロビーズを摂取して48時間以上たってから、サンゴのポリプはマイクロビーズを吐き出す。しかし、マイクロビーズを吐き出した後でも、蛍光グリーンで判別できる大腸菌はポリプの消化管に残っていたのだ。大腸菌が付着したマイクロビーズを食べたポリプは例外なく、2週間以内に死んだ。

カリフォルニア大学アーバイン校の生態学者ジョリア・ラム氏は第三者の立場で、「今回の研究で最も興味深いのはこの部分です。これまで細菌に注目した人はいませんでしたから」と評価する。ラム氏は何百ものサンゴ礁を調査し、大きなプラスチックごみによる病気や汚染を記録してきた。2018年に「Science」誌に発表した研究では、プラスチックに触れたサンゴは、病気になる個体が通常の20倍にもなることを明らかにした。

実は、大腸菌は海で広く見られる細菌ではない。海にはもっと多くの細菌が存在し、マイクロプラスチックの表面はそれらのすみかとなる。人が出したごみのかけらに新しい細菌や有害な細菌が付着し、まるでヒッチハイクのように海を移動するために、病気になるサンゴが増えるのではないかと、研究者たちは考えている。

もちろん、すべてのサンゴがマイクロビーズや、ビーズに付着した細菌に、同じ反応を示すわけではないだろう。ロットジャン氏らの研究に用いられたサンゴは1つの種のみだ。こうしたことを勘案しても、ロットジャン氏はこの研究結果は憂慮すべきものと考えている。

「私たちが海にもたらした混乱には、恐怖すら覚えます」。ただし、ロットジャン氏は次のように語ることも忘れない。「でも、こうした事実が、海をきれいにしなくてはいけない、という強い動機につながるのです」

(文 JENNY HOWARD、訳 米井香織、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年6月29日付]

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