NIKKEIプラス1

8位 飛騨高山ジャズフェスティバル
(岐阜県高山市) 260ポイント
レトロな街並み生かして

2018年開始と歴史は浅いが、飛騨高山のレトロなイメージとジャズの取り合わせの妙が評価された。古民家を利用したステージもあり、「古き良き日本の空間を体感しながらジャズを聴けるのは貴重」(加瀬さん)。

ジャズをたっぷり聴いた後、高山の古い街並みを散策するのもよし。「高山独自の文化・ロケーションを生かし、街づくりにも配慮している」(藤原さん)

会場の「飛騨の里」はJR高山駅から2キロの距離。駅から無料シャトルバスを30分に1本運行している。

(1)19年は5月25日、20年は未定(2)前売り券は6700円(3)https://hidatakayama-jazz.com/

9位 鹿児島ジャズフェスティバル
(鹿児島市) 230ポイント
即興アンサンブル 楽しんで

「音楽の息づく街」をコンセプトに17年スタート。ミュージシャンの創意工夫を刺激するため、即興のアンサンブル(2人以上が同時に演奏すること)を重視して出演者を様々に組み合わせるプログラムが特徴。「普段は見られない組み合わせを楽しめる」(加瀬さん)

会場は6カ所。行き当たりばったりで巡るとそれがそのまま市内の小旅行になり「音楽の息づく街」を感じさせる仕掛けだ。「ある程度まとまった場所にあるので見やすい」(田中さん)。実力派ミュージシャンをベテランから若手までバランスよく起用する点も評価が高かった。

(1)9月6~8日(2)無料(3)電話099・297・5859

10位 ハママツ・ジャズ・ウィーク
(浜松市) 220ポイント
ヤマハと市が一体で運営

楽器メーカーのヤマハと浜松市が一体となって企画・運営する地域文化イベント。全国の幅広いジャズファンに親しまれている。「楽器の街で聴くジャズは他のフェスより音色がいい、と思いたくなる」(馬場さん)

今年は新たに、小学生から大学生までのビッグバンドを対象にしたワークショップや、名ピアニストのビル・エヴァンス生誕90周年を記念した特別企画を予定。「ジャズ評論家のトークショーなど音楽を多角的にイベント化して見せている」(小杉さん)。

(1)10月19~27日(2)800~9000円(会場により異なる)、無料イベントも(3)電話053・460・3325

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市民が主体の都市型主流に

1970~90年代に日本でジャズフェスといえば、海外の一流ミュージシャンを招いて一夜きりのコンサートを開く形態が一般的だった。ところが2000年代に入ると、市民が主体となって町ぐるみで楽しむ都市型フェスが登場。今回のランキングも大半が都市型となった。

都市型フェスの中核を担うのが、地域のジャズ喫茶店と愛好家たち。「音楽情報が豊富にある中央への憧れもあって、地方のジャズ喫茶に集まる人々が独自のジャズの楽しみ方を企画し、フェスとして発展していった」。東京都内でジャズ喫茶を営む後藤雅洋さんはこう分析する。

ジャズフェスは一過性のイベントにとどまらない。3位のサッポロでは、小中学生向けのジャズスクールから寺久保エレナ(アルトサクソフォン奏者)や石若駿(ドラマー)など実力派ミュージシャンが育った。「こうした文化的な取り組みが日本全体のジャズシーンの活性化につながる」と、音楽サイト、ARBANを運営する大伴公一さんは期待を寄せる。

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ランキングの見方 数字は専門家の評価を点数化。ジャズフェスの名称(所在地)。(1)2019年の開催日(2)大人1人の税込み料金(3)問い合わせ先。写真は2位大河原雅彦、5位岡利恵子撮影、ほかは各運営事務局の提供。

調査の方法 ジャズに詳しい専門家の協力で、国内の主要なジャズフェスを27カ所リストアップ。「地域・町ぐるみで楽しめる」「演目や場所の演出などプログラムが充実している」「地元の協力姿勢」の視点で専門家が1位から10位まで順位付けし、編集部で集計した。フェスの企画・運営に携わる専門家は、自身が関わるフェスを除外して評価してもらった。(木ノ内敏久が担当しました)

今週の専門家 ▽大伴公一(音楽サイトARBAN プロデューサー)▽加瀬正之(The Walker’s発行人兼編集人/ライター)▽小杉啓文(ラジオDJ)▽後藤雅洋(ジャズ喫茶「いーぐる」店主)▽佐藤伸行(ヤマハ ジャズ フェスティバル プロデューサー)▽島田奈央子(音楽ライター)▽田中伸明(電通アソシエイト・プロデューサー)▽馬場雅之(タワーレコード JAZZバイヤー)▽藤原清登(音楽家)▽門馬瑠依(ジャズボーカリスト)=敬称略、五十音順

[NIKKEIプラス1 2019年7月6日付]

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