「かわいい野獣」顔の三菱eKクロス 変化球で勝負

大石 そりゃあしょうがないですよ。そもそも販売店の数が違いますし。

小沢 そういう意味で、今回はより振り切って勝負に出られたってのはありますよね?

大石 その通りです。同じ土俵に乗っちゃうと向こうのほうが売れちゃうんで。今回はあえて土俵から外れたんです。

小沢 最近の三菱デザインはみんなそうで明らかに振り切れてる。同時に三菱ファンにちゃんと受ければいいってのもありますよね。

大石 そこもあります。ミニバンのデリカD:5も19年に新型が出ましたが、やはり前モデルのユーザーにたくさん買っていただいてます。

小沢 平たくデザインをみると三菱eKクロスが攻めまくってる割に、日産デイズは無難にも見えます。

大石 結局デイズはワゴンRやダイハツ「ムーヴ」、ホンダ「Nワゴン」と同じ土俵に上がるわけじゃないですか。王道の日産さんはそれでいいと思うんです。一方、僕らはノーマルではなく、カスタムデザインに特化して変化球を投げなければ勝てない。それは自分達で分かっていますから。僕らは国内のこの分野で10%取れれば御の字ですよ。10人に1人に「これいいね」と言っていただければ、残りの9人の方に「ええ?」って言われても万々歳。

小沢 割り切りの戦略ですね。で、以前このデザイン戦略は日産グループ傘下に入ったからできるようになったと聞きましたが。

大石 そうです。日産の下に入って、デザインプライオリティ(優先度)が明らかに上がりました。デザイン部門のトップが日産から来て役員の位置にいるんです。かつてだったらこんな勝負はできなかったと思います。

小沢 同時に「マグニチュードディスカッション」というのができたとも聞きました。

大石 ああ、「差異化の会議」の話ですね。三菱と日産でどこに商品的な違いをつけ、すみ分けを図るのか。それに関しても以前よりも考えました。前モデルは(eKワゴンとデイズ両者の)ノーマルモデルのデザインでたくさん差をつけて、一方、カスタムモデルはバンパー&グリルしか変更せず、ランプまで共通にしたらあまり売れなかった。比率でいうとノーマルeKワゴンが8売れるのに対してeKカスタムが2。

同じような顔をしていたら、やはり日産車を買うんですよ。だから今回はカスタムに資源をより注入してユニークに作り分けた。さきほど言ったヘッドライトの位置にしろeKワゴンと「デイズ ハイウェイスター」じゃ全く違う。お金がかかってます。

小沢 名前まで変えましたもんね。eKカスタムからeKクロスに。そして三菱が生きていく道はここだとハッキリ見えてきた。

大石 今回、月間販売数量の目標は月4000台に置いてますが、既に達成してます。前は全体で1000台ぐらいでしたが、今回はクロス76%、ノーマル24%で予想通りクロスの方が売れている。

小沢 実際に受けているんだ、コレ。ま、大石さん怒るかもしれないけど、今クルマの顔はちょっとキモいくらいの方がいいのかもしれないですね。

大石 かもしれない(笑)。キモかわいいって言うか分かりやすさというか。DA PUMPのヒット曲「U.S.A.」じゃないけれど、多少ヘンでも分かりやすいハデさが重要なので。

小沢コージ
自動車からスクーターから時計まで斬るバラエティー自動車ジャーナリスト。連載は日経トレンディネット「ビューティフルカー」のほか、「ベストカー」「時計Begin」「MonoMax」「夕刊フジ」「週刊プレイボーイ」、不定期で「carview!」「VividCar」などに寄稿。著書に「クルマ界のすごい12人」(新潮新書)「車の運転が怖い人のためのドライブ上達読本」(宝島社)など。愛車はロールス・ロイス・コーニッシュクーペ、シティ・カブリオレなど。

(編集協力 北川雅恵)

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