キャンパスの広さに比べ、意外なほどの少人数制を貫いている。基本的に1学年1クラス(原則40人)制で、全体でも800人ほど。大規模な大学の1学部にも満たない。この顔の見える環境が仲間同士、先輩・後輩の深い結び付きを育む。自由学園では創立以来、学校を一つの「大きな家族」と位置づけてきた。生徒と教師全員が毎日、食堂で食事を共にしていることは、その実践といえるだろう。
寮生活、生徒は必ず経験
人数が少ない学校は、「有力大学合格者ランキング」のようなものには登場しにくい。既成の「偏差値ヒエラルキー」「トップ大学合格者数レース」に背を向け、大学への進学実績を公開しない学校もある。自由学園の場合、自前の最高学部に進む生徒が少なくない。たとえば男子高等科からは、2013年~16年の平均で60%程度が「内部進学」だったという。それだけにランキングには、なじみにくい。
ただ、直近の進学先一覧をみると、名の通った大学に進んだ生徒が多いのが分かる。早稲田大学の国際教養学部のような「とがった学部・学科」への進学が目立ち、漫画教育の先駆けとなった京都精華大学のマンガ学部を選んだ生徒もいた。「とりあえず偏差値上位の大学・学部へ」といった意識よりは、自ら目標を立てて、ポジティブに学び抜こうとする志向がうかがえる。
寮生活は、自由学園の軸になっている。高橋氏は「互いに深く知り合い、支え合うのが寮生活の基本」と話す。男子部は中等科でも高等科でも、入って最初の1年間は必ず寮で暮らす。その後も、通える範囲に住んでいながら寮を選ぶケースが多く、約80%が寮生活を送っているという。女子部でも、寮に入る生徒の割合は約50%に上る。寮の管理運営は生徒に委ねられていて、自治を体験的に学ぶ機会ともなる。
男子部新入生の面倒をみる高等科3年生は、ほとんどが寮に入る。いったん寮を出た生徒も戻ってくる。「庶務」「食」「住」「農芸」など、学校自治を担う委員も寮に入る決まりで、女子部も全員が寮生活を経験する。高橋氏は「24時間の学びを象徴する存在が寮といえる」と述べ、「生活即教育」と寮生活のシナジー(相乗効果)を認める。
昼食は生徒が毎日調理
自由学園女子部では毎日の昼食を生徒が作っている。ご飯は薪(まき)のかまどで炊く。その薪は、キャンパス内で調達している。女子部では約300人分のランチをまかなう。95年間にわたって練り上げられた献立は『自由学園 最高の「お食事」』(JIYU5074Labo著、新潮社)というレシピブックにもなっている。食材にはキャンパスの畑の作物が使われることも珍しくない。