新生開業の「渋谷パルコ」 エンタメで街のへそを狙う

日経クロストレンド

2019年11月開業予定の新生「渋谷パルコ」(画像提供:PARCO)
2019年11月開業予定の新生「渋谷パルコ」(画像提供:PARCO)
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2016年に一時休業した渋谷パルコ(パート1&3)の再開発事業計画の全容が明らかになった。多様なブランドでファッションを強化し、商業施設の要であるフードも充実させる。劇場や映画館など渋谷パルコの源流ともいえるカルチャー発信にも注力する。

パルコが19年6月18日に開催した説明会で同社の牧山浩三社長が概要を話した。新しい渋谷パルコは19年11月下旬にオープンの予定。そのコンセプトは、「世界へ発信する唯一無二の“次世代型商業施設”」。デザイン、アート、エンターテインメントを軸とした専門店や施設で独自性を高める。ターゲットは「ノンエイジ」「ジェンダーレス」「コスモポリタン」がキーワードで、特定の年齢層や性別にこだわらないという。

説明会でパルコの牧山浩三社長は、「パルコが小売りを元気にしていく」と話した

テナント数は約180。「ファッション」「アート&カルチャー」「エンターテインメント」「フード」「テクノロジー」の5ジャンルで構成する。特にファッションは、グッチやロエベなどのラグジュアリーブランドからロリータ系ファッションまで幅広くそろえる。牧山浩三社長は、「パルコはファッションを強く標榜してきた。本当のファッション好きが満足できるリアル店舗を作り、次の提案としたい」と、述べた。

PARCO開店準備室管掌の泉水隆常務は、「世界から興味を持たれている東京ファッションの今を表現していく」と話す。「CORNER of TOKYO STREET」と名付けられた3階フロアのアパレル店舗のうち、半数以上が商業施設に初出店という。休業前の渋谷パルコのインバウンド比率は約2割。「ラグジュアリーのモードファッションを強化し、3割に上げたい」(泉水氏)と国内外からの需要増へ期待を込める。

3階のファッションフロアは、半数以上の店舗が商業施設初出店(画像提供:PARCO)

エンタメシティ渋谷の「へそ」として貢献

もともと渋谷パルコは、西武劇場の中に商業施設を作るという形で1973年に誕生した。エンターテインメントとは切っても切れない縁がある商業施設だ。新生パルコが「文化貢献の要」と位置付けるPARCO劇場は、旧劇場の約1.5倍の座席数(636席)に拡張される。さらに、ミニシアター「CINE QUINTO SHIBUYA PARCO(仮称)」が新たにオープンする予定で、すでに移転開業中のCINE QUINTO(渋谷区宇田川)を合わせて、計3つのスクリーンを用意した。

新設のシアターは海外ミュージカルなど感度の高いカルチャー好きが満足できる企画を実施する方針だ。オープニング作品は、草間彌生の半生を描くドキュメンタリー映画『KUSAMA: INFINITY(原題)』(ヘザー・レンズ監督)を上映予定。

旧劇場の約1.5倍の座席数に拡張されるPARCO劇場

牧山社長は、「(渋谷は)たくさんのアーティストを輩出し、エンタメ最先端の街といわれるようになった。(新生パルコは)エンターテインメントシティー渋谷の『へそ』になりたい」と力を込める。

さらに、アート&カルチャーも充実させる。「ほぼ日刊イトイ新聞」による文化の案内所やギャラリー機能を持つ店舗、任天堂のアンテナショップ「Nintendo TOKYO」や「ポケモンセンター シブヤ」が入り、国内外へ情報を発信する。

「ごちゃ混ぜ」フード&テクノロジー活用

泉水氏が、「今や商業施設の命運を分ける」と話すフードもパルコらしさを追求した。地下1階のメインレストランフロア「CHAOS KITCHEN」は、ミシュランにも掲載された名店の新業態から昆虫料理まで多様な21の飲食店のほか、レコードショップやコンドーム専門店「Condomania」などが並ぶ大人向けのカオスな飲食ゾーン。一方、7階は、回転すしや天ぷらなどインバウンドに向けた日本食が楽しめるフロアだ。

最新テクノロジーも導入する。5階フロアでは、オムニチャネル型の売り場を展開し、130坪のエリアに11の小型店舗が出店する。店頭在庫を抑え、店頭にないものはネット通販で購入してもらうという。公式アプリユーザー向けに、電子化したレシートがスマホに届く電子レシートサービスにも対応する。

レシート管理アプリ「スマートレシートサービス」(東芝テック)を活用する。「電子レシート」を提供するほか、買い物履歴やアプリの利用データな どをAIが分析し、好みにマッチするショップや商品・サービス・コンテンツ情報を配信する予定

スペイン坂から続く立体街路には、フロアごとに入り口を設け、休憩スペースや四季を感じる植栽を配置する。

「今回、国家戦略特区制度を利用させていただいた。この制度を利用する建物は駅直結の大型物件がほとんど。空気を感じて、雨が降ったら雨を楽しむという心を豊かにする建物がない。坂の上の特区を使った空間の創造は我々にも渋谷区にとっても新しい挑戦。(店舗などの)営業面積をそぎ落としてもみなさんが楽しめる豊かな空間を作りたい」と、牧山社長は自然豊かな空間作りについて持論を述べた。

ナカシブ通りは24時間通り抜け可能な歩行者専用通路になる。「歩行者に優しい街に貢献してくれる」(長谷部健・渋谷区長)(画像提供:PARCO)

さらに、パート1とパート3の間にあった道路は「ナカシブ通り」と名付けられ、24時間通り抜け可能な歩行者専用通路になる。牧山社長は、「渋谷は若者の殿堂から大人の街へ変わりつつある。裏通りが楽しくなり、多様化している。ナカシブ通りを起点に、パルコへの来店が増えればもっとアーティスティックな街に変ぼうしていく」と、新生パルコを「変わる渋谷」の象徴と位置付ける。

長谷部健・渋谷区長は、「パルコがパワーアップして戻って来てくれるのは、街の安心安全の面でも大変うれしい」と述べた。

(ライター 北川聖恵)

[日経クロストレンド 2019年6月19日の記事を再構成]