
メニューは北海道産バターと特製のだしじょうゆでコンロ焼きにする「ホタテ浜焼き」(320円、税別)を筆頭に、「半熟ホタテフライ(3ケ)」(800円、同)、「ホタテの串焼き」(680円~、同)、トマトと合わせた「ホタテカルパッチョ」(850円、同)などシンプルなものがそろう。
「毎日枝幸から届く新鮮な天然ホタテを使っています。枝幸は北海道のほぼ最北端にある町で、ここでとれるホタテはグリコーゲン(糖質の一種)の値がほかの国産のホタテ品種と比べて圧倒的に高いそうです。そのせいか甘みが突出しています。貝の繊維がそろって食感もいいんです」と大須賀氏が主張する通り、かむと果物を味わっているような、上品で繊細なうま味を感じる。
前出の2店とは逆に、同店のファンは圧倒的に女性が多い。また中野という住宅地に近い場所柄もあり、地元客が中心かと思ったが、人気ユーチューバーやテレビのワイドショーが取り上げたのをきっかけに全国的に認知度が上昇。大阪や福岡、そしてホタテの産地でもある北海道からも、女性客が絶えず訪れるという。

「北海道産ホタテ、と言うと十把一絡げで扱われてしまいますが、枝幸のホタテの品質は世界一だと思っています。東京から発信し、日本の『枝幸ホタテ』をブランド化するのが夢です」(大須賀氏)
今回、取材前に「貝を連続して食べて、具合が悪くなったらどうしよう」と思っていたが、そんな心配は一切不要だった。貝毒(下痢性とまひ性がある)を絶対に起こさぬよう、出荷前に厳格なサンプルチェックを行うなど各店はあらゆる防止策を講じているという。
体調を崩すどころか、逆にタウリン(貝類に豊富なアミノ酸の一種。血圧やコレステロール値、肝機能を安定させる作用が期待できる)のおかげか、食べるほどパワーがみなぎってくるかのよう(に感じた)。そして貝が開くまでを待つ時間や、殻ごとかぶりつく瞬間のワクワク感は、ほかの食材では味わえない。貝は「食べるエンターティンメント」なのである。気のおけない友人や同僚と、一度体験してみてはいかがだろうか。
(フードライター 浅野陽子)