子や孫の胃がんリスクを下げる 夫婦でピロリ菌検査
しっかり対策ピロリ菌(中)
日本の女性がかかるがんのうち、3番目に多いのが胃がん。その主因とされるのがヘリコバクター・ピロリ(以下ピロリ菌)だが、早期に除菌すれば、胃がんや胃潰瘍などの予防が期待できる。前回の「胃がんの原因ピロリ菌 胃腸からの出血リスクも増加」に引き続き、今回はピロリ菌に感染しているかを調べる検査方法を取り上げる。
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ピロリ菌はひとたび感染すると、除菌しない限り胃の中にすみ続ける。がんリスクを下げるにはまず検査で感染しているかどうかを確認しよう。胃痛などの症状があれば消化器内科を受診し、胃炎や胃がんの有無などを確かめるため、胃内視鏡検査を必ず受ける必要がある。
無症状の場合、40歳以上であれば定期的ながん検診や人間ドックに、感染を確かめる検査が含まれていることが多いので、それらを活用しよう。異常(陽性)が認められたら消化器内科を受診し、先述の流れになる。
ちなみに、ピロリ菌の感染を調べる検査は、自費でも2000円程度から受けられる。40歳未満で自治体の検査対象にならない場合、親や祖父母が胃がんを経験している人など、心配がある人は検査を実施している近所の医療機関で受けられないか相談してみよう。
感染していても無症状の人が多いだけに、知らないうちに子や孫の世代にうつし、みすみす胃がんの発症リスクを高めてしまうことは避けたい。「結婚するタイミングなどの節目でピロリ菌の検査を受けておくことは、自分と、将来の自分の子どもや孫の胃がんリスクを下げることにつながる。配偶者も一緒に受けるのがいい」(東海大学医学部の鈴木秀和教授)。
ピロリ菌感染を調べる検査方法は表のとおり。血液や尿などで、感染していると高値になる抗体の量で判断する方法と、胃粘膜を採取し観察や培養で判断する方法に大別される。健診などで広く行われているのは血液検査で、採血による血糖値や中性脂肪値といった、他の項目と一緒に調べられる。
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ピロリ菌の検査は人間ドック後でも受けられる
ピロリ菌感染検査は胃の画像検査とセットで受けることが保険適用の条件となる。過去6カ月以内に人間ドックなどでバリウム検査や胃内視鏡検査を受け胃炎や胃潰瘍と診断された人は、その記録を提示すれば、検査を受けた施設とは別の医療機関でも、内視鏡検査を省略して感染検査を保険診療で受けられる(6カ月以内は日本消化器病学会の見解)。該当しそうな人はピロリ菌感染検査を実施している医療機関に問い合わせをしよう。
東海大学医学部内科学系消化器内科学(神奈川県伊勢原市)教授。1993年慶應大学医学研究科博士課程修了。米国留学、北里研究所病院消化器科医長、慶應義塾大学医学部教授などを経て2019年4月より現職。日本ヘリコバクター学会副理事長。
南毛利内科(神奈川県厚木市)院長。1991年香川医科大学(現・香川大学医学部)卒、東海大学医学部大学院修了。米国留学、神奈川県内診療所院長などを経て2013年より開業。専門は消化器内科。抗加齢にも詳しい。
(ライター:渡邉真由美、構成:デジタル編集部 中西奈美)
[日経ヘルス2019年6月号の記事を再構成]
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