癖を感じたのは、右左折やコーナリング時だ。これはカンナム共通のことだが、前輪が2輪なので、安定性に優れる分、オートバイほど身軽な走りはできない。曲がりたいときは、しっかりとステアリングを切ることが大切となる。この瞬間ばかりは、これはオートバイとは異なるのだと二輪免許をもっていない人間でも強く意識させられた。ただ走行中に感じられる開放感は自動車では味わえない魅力だった。

オフロード走行を想定したモデルも

試乗を終えて感じたのは、エントリーモデルとはいえ、乗り物としての刺激は高いということだった。CVTもネガティブな存在でなく、より運転を楽しむ武器になっていたのも新鮮だった。このCVTは同社のスノーモービルにも採用されているものだという。ただ常にオンロードと相性抜群とはいかないようで、強い加速時などに時折、軽いシフトショック的なものを感じるのは気になった。とはいえライカーは、スポーティーなキャラクターなので、その荒々しさも元気の良さと受け止める人もいるかもしれない。

さらにライカーには、オフロード走行も共用する「ラリーエディション」も設定している(価格は174万9000円から)。トライクでオフロードを駆け抜けるという体験は、かなり興味深い。

上位モデルであるスパイダーと比べるとキャラクター性も異なると感じた。選ぶ仕様にもよるが、ツーリングでの快適さや2人乗りが選べることなど、スパイダーならではの魅力もある。だがトライクに関心を持つ人にとって、約140万円からというライカーの価格は、強く心を揺さぶる要素だろう。

とはいえ、それなりの駐車スペースが必要となるし、オートバイと比べて安定性は高いが走行ラインの自由度も少ないといったトライクならではのハードルは、スパイダーもライカーも変わらない。限られた人のための特別な乗り物であることは、今まで同様といえそうだ。

2018年に米国で発売したところ、従来よりも若者や女性の人気が高かったという
大音安弘
1980年生まれ、埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在は自動車ライターとして、軽自動車からスーパーカーまで幅広く取材している。自動車の「今」を分かりやすく伝えられように心がける。