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鳥はお金持ちが大好き 「ぜいたく効果」は新興国でも

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/6/22

ナショナルジオグラフィック日本版

南アフリカ、ケープタウンの中心部から13キロほどの距離にあるカーステンボッシュ国立植物園の花をついばむミドリオナガタイヨウチョウ(PHOTOGRAPH BY ANN AND STEVE TOON, MINDEN PICTURES)

学術誌「Global Change Biology」に発表された研究によると、南アフリカの経済的に豊かな人々が暮らす地域には、比較的裕福でない地域に比べて、在来種の鳥が多様だったという。これは、経済的に豊かな人々が住む地域には緑が多く、動物たちのすみかに適しているためだと考えられている。

これは「ぜいたく効果」と言われる現象で、これまでも欧州、米国、オーストラリアで観察されている。しかし、南アフリカで、この効果が確認されたのは初めてだ。

「ぜいたく効果」は、2003年、米アリゾナ州フェニックスの植物多様性に関する論文で提唱された。その後、昆虫、コウモリ、トカゲなど、様々な種に同様の傾向があることが確認されている。

美しく整えられた広い庭、水や動物の子を隠す草木がある――こうしたことが、野生の動物や植物を引き付ける要因となるというものだ。

伊トリノ大学の生態学者で、今回の論文の主執筆者であるダン・チェンバレン氏は、これまでの研究が、北米、欧州、オーストラリアなど豊かな国々に限られていたことを指摘する。

都市化の進行と生物多様性の喪失は、実は、南米、東南アジア、アフリカの一部地域の状況の方がより深刻なのだが、この地域の研究が進んでいなかったのだ。

今回の研究で、チェンバレン氏のチームは、南アフリカにも「ぜいたく効果」が存在することを確認したことになる。同氏らは、都市計画に携わる人は、住民が自然に親しむ機会を等しく持てるようにすべきだと訴えている。

チェンバレン氏らの提案は、人間と野生生物の双方が、より良く暮らせるよう、世界の都市部の半分は公園など緑地にすべきというものだ。

「豊かな人たちは緑地の恩恵を受けています。では、貧しいからといって、こうした恩恵を得られなくていいのでしょうか」

■都市部での保全には住居の調査も必要

チェンバレン氏は「南アフリカがこうした研究に適している」と語る。その理由は「所得格差が大きく、都市部も急速に拡大しているから」(同氏)だ。

この研究では、「第2回南アフリカ鳥類地図帳プロジェクト」(ボランティアが特定地域で目撃した鳥の種類を報告する市民参加型プロジェクト)のデータを活用している。チェンバレン氏と、ケープタウンやヴィトヴァーテルスラントの大学に所属する研究者らは、このデータを基にして、22の都市部で在来種の鳥類の多様性を調べた。

その結果、都市部と農村部の境界でも郊外でも、所得水準の高い住人が多い地域ほど、緑地も在来種の鳥も多様性に富むことがわかった。

一方、人口密度が高い都市中心部では、これとは違う現象が見られた。草木があっても、アフリカチュウヒやズアカコシアカツバメばかりが多く見られたのだ。

定量分析の結果、「ぜいたく効果」が見られるのは、エリアに占める舗装道路や住宅の割合が「38パーセント」以下だと分かった。

「この数字がはっきりしたことは重要です」と語るのは、「ぜいたく効果」を研究する米カリフォルニア科学アカデミーの昆虫学者、ミシェル・トラウトワイン氏だ。同氏は、2016年の研究で、米ノースカロライナでは、所得が高い住宅のほうが、ほかの住宅に比べて昆虫の種が多様であることを突き止めている。

オリーブバト。南アフリカ、モンタギュー峠で撮影(PHOTOGRAPH BY RICHARD DU TOIT, MINDEN PICTURES)

「非常に説得力のある研究です。特にすばらしいのは、定量的に分析を行っていることです。もちろん、緑地をどの程度増やせばいいか分かることと、実際にどう実現するのかは、別の問題になりますが」と同氏は話す。

米マサチューセッツ大学の都市生態学者、ページ・ウォレン氏は、「都市環境理解には、科学者も多様なアプローチが必要なことを示した研究だと思います。鳥がどこにいるかを把握しようと思ったら、実は人間の居住環境がどうなっているかも併せて調べないとならない、ということです」

(文 CARRIE ARNOLD、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年6月6日付]

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