2019/7/7

チェンジメーカーの育て方

小林氏が教育の場での徹底的な多様性を重視する背景には、3つの原体験がある。

1つ目は、国立大付属高校を1年でやめ、奨学金を受けてカナダの全寮制高校で学んだ経験だ。「日本では、苦手科目を克服するよう強調されました。ところが、カナダでは『あなたは何ができるのか。何が得意か』と聞かれたのです。まったく異なる価値観や世界があると知って驚きました」(小林氏)

「リーダーは教育から」 思い知った原体験

フィリピンで活動する非営利法人(NPO)の仲間と子どもたち=小林りん氏提供

2つ目は、夏休みにメキシコ出身の友だちの家を訪ねたことだ。「メキシコでは中流家庭でも、日本に比べればかなり貧しいと感じました。連れていってもらったスラム街の光景は、もっと衝撃的でした。働く場所のない大人やストリートチルドレンがあふれていました。家があって公教育も受けられる環境は、当たり前ではない。世界を見れば、自分がほんの数%の恵まれた環境にいたのだと痛感しました」(小林氏)

3つ目は、国連児童基金(ユニセフ)の職員として働いたフィリピンでの体験だ。就学機会のない子どもたちへの教育を支援する草の根の非営利法人(NPO)と一緒に活動した。小林氏は「意義のある活動ですが、これだけでは圧倒的な格差や汚職が渦巻く状況は変わらないのではないかと思いました。社会の仕組みを変えるには、その国で教育を受けた人たちがリーダーになる必要もあると強く感じたのです」と話す。

発展途上国の開発支援では、「魚を与えるより、釣り方を教えよ」といわれる。物資の援助より、自活の道をつけるのが大切という考え方だ。「国の未来を決める国民が文字も読めず、情報を正しく理解できないようでは、的確な判断はできません。教育の機会を提供し、自分で考える力、物事を変えていく力を持った子どもが育てば、間接的な支援になると思いました。教育は出自や環境を超え、能力や志次第で活躍できるようになる唯一の手段なのです」(小林氏)

フィリピンで小林氏は、後にUWC ISAKの発起人代表にもなった投資家、谷家衛氏と出会う。初対面の谷家氏から、「アジアの未来を担うようなチェンジメーカーを輩出する学校をつくろう。日本でも、そういう人材が切望されている」と持ちかけられた小林氏は、天命のようなものを覚えたという。

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チェンジメーカーの資質、教育で磨ける