「満員の舞台に立たせたい」 野球も宝塚も願いは同じ宝塚歌劇団 小川友次理事長(下)

――野球なら試合に勝つのがその第一歩です。宝塚歌劇の場合はどうでしたか。

「貸し切り公演などの営業面の努力も続けましたが、やはり宝塚は作品ありきです。私が理事長になってから新作を次々発表するなど挑戦をしてきました」

トヨタに通じる「競争相手はお客さま」

「トヨタ自動車の名誉会長、豊田章一郎氏も、同じようなことをおっしゃっていて、はっとしたことがありました。長男でトヨタ社長の豊田章男氏は、実は慶応高校時代からの同級生です。そうしたご縁から、2005年の愛知万博(愛・地球博)で宝塚OGによるコンサートを開いたことがありました。その後、今度は章一郎氏が宝塚大劇場まで歌劇団を見に来てくださったときのことです」

「章一郎氏がいきなり『小川君、宝塚歌劇の競争相手はどこだ?』って聞かれたのです。僕は『宝塚はオンリーワンの存在ですから、競争相手はお客様だと思っています』と答えました。お客様にいかにいい作品を見てもらえるかということに尽きると思っているからです。すると、章一郎氏も『そうだね。トヨタもそうなんだよ』と。トヨタもお客様が一番大事。しようもない車を出したらトヨタだって潰れるんだよって。世界のトヨタのリーダーが、こんな危機感をもってお客様と向き合っているのかと、背筋が伸びる思いでした」

――具体的にはどのような作品に挑戦しましたか。

「1つでもしようもない作品を出したら駄目になるかもしれない。そのくらいの覚悟で勝負しなければと思っています。例えば、15年の『ルパン三世』や16年の『るろうに剣心』は、アニメやコミックが原作です。映画やテレビドラマ、ゲームソフトを原作にしたものもあります。それまでの古典的な宝塚作品とは趣向が違うものもどんどん取り入れていこうという試みです」

「一方、営業面では先日、チケット価格の改定を発表しました。一部値上げになりますが、S席以下は1万円以内を死守し、A席とB席は価格を据え置きました。できるだけ多くのお客様をお迎えするためのギリギリのラインだと思っています」

「満員が当たり前だと思ってはいけない」と自戒する

「今年19年は創立105周年です。100周年に向けて営業努力もした成果もあり、今は満員が続いていますが、これが当たり前だと思ってはいけない。特に今の若い生徒さんやスタッフは苦しかった時代を知りません。だから『座席が赤いっていわれた時代があったんだよ』ということを伝えるのも、リーダーを任されている僕の役目だと思っています。今までのお客様を大事にしながら、新しいお客様にも来ていただけるような作品作りを心がけて、現場を育てていきたいですね」

(藤原仁美)

小川友次
1956年大阪府柏原市生まれ。79年慶大卒、阪急電鉄入社。83年阪急ブレーブス(現オリックス・バファローズ)で広報を担当。98年宝塚大劇場総支配人、2005年梅田芸術劇場専務、09年同社長、15年宝塚歌劇団理事長。

〈訂正〉6月20日5:40に公開した「『満員の舞台に立たせたい』 野球も宝塚も願いは同じ」の記事中、2ページ目の写真の説明で「中央は上田監督」とあるのは別の人物の誤りでした。本文は訂正済みです。

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