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【平衡感覚のチェック1】

※誰かに見てもらうか、スマホのカメラで動画を撮って確認するといい。

(1)足の親指とかかとをつけてまっすぐ立ち、30秒両目を閉じて体の傾きを見る。

体が傾いた場合、傾いた側の足のバランスのセンサー[注4]や背骨を介して脳に伝わる神経系[注5]の入力が鈍っているか、傾いた側とは反対側の脳の処理能力が低下している可能性がある。

[注4]足の裏には刺激を感じ取るセンサーがたくさん存在している。この機能が鈍っていると、体の傾きなどの情報が脳に正しく伝わらないためバランスが取れなくなる。左右の手足は反対側の脳によって支配されているため、例えば右足のセンサーが鈍っていると左脳の処理能力が低下している可能性も考えられる。

[注5]背骨には脳から手足へと情報を伝える運動神経と手足から情報を受け取る感覚神経が通る太いバイパスとなる脊髄神経があり、猫背姿勢など背骨が正しい位置を保てない状態により、足裏や背骨、筋肉などからの感覚情報が正しく脳へ伝えられずバランスにも影響を及ぼす。

【平衡感覚のチェック2】

※誰かに見てもらうか、スマホのカメラで動画を撮って確認するといい。周りに物がないか確認してから始める。高齢者や「平衡感覚のチェック1」でふらつく人は危険なので行わない。

(1)足の親指とかかとをつけてまっすぐ立ち、両目を閉じて、体と太ももの角度が90度になるように片方の脚を上げる(左右10秒ずつ)。

ふらついた場合、ふらつく側の足のバランスのセンサーが鈍っているか、ふらついた側とは反対側の脳の処理能力が低下している。

全ての運動のベースは「脳のコンディショニング」

もし、チェックの結果が悪かったとしても、落ち込むことはないそうだ。「一般の人はもちろん、アスリートでもこれらができない人は少なくありませんし、感覚器や脳のコンディションは整えることができます」(江口さん)

江口さんが提唱しているのは、感覚器からの情報入力と脳の情報処理に着目した「脳のコンディショニング」だ。

江口さんはこのメソッドをオリンピック選手や世界マスターズの選手など、いろいろな競技のアスリートのトレーニングに取り入れて、成果を上げている。全てのスポーツのベーストレーニングとして有効なのだという。また、選手だけでなく、運動能力と判断力が問われるサッカーのレフェリーの間でも定評があるという。JリーグやW杯で活躍する有名レフェリーの西村雄一氏もこのメソッドの開発に関わっているそうだ。

で、具体的にやることだが、「ホントにこれだけ?」と拍子抜けするほど簡単なエクササイズだ。

きついトレーニングなしでスポーツのパフォーマンスが上がったり、若々しく動けるようになったり、仕事のパフォーマンスが上がるとしたら……? やらない手はないだろう。エクササイズの詳細は次回記事「脳活性化で体機能向上 アスリートも励む赤ちゃん返り」で紹介しよう。

(文 村山真由美、写真 鈴木愛子)

江口典秀さん
マークスライフサポート代表取締役、日本オリンピック委員会強化スタッフ。順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科修了後、プロスポーツ選手や実業団選手など、多くのトップアスリートのケアおよびトレーニングを指導してきた。これまで夏季・冬季オリンピックにてセーリングやアルペンスキーの日本代表チームのコンディショニングを担当。現在は神経科学を応用した脳のコンディショニング「トータルニューロコンディショニング(TNC)」の普及に尽力している。

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