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二刀流・大谷を育てた監督 「サーバント上司」に学ぶ 『部下に9割任せる!』 吉田幸弘氏

2019/6/12

大リーグ挑戦を表明する大谷翔平選手(2017年11月)

チームリーダーや上司に期待されるイメージが変容してきた。強力な指導力を発揮するのではなく、部下に仕事を任せ、能力を伸ばす「サーバント型」が評価されつつある。『部下に9割任せる!』(フォレスト出版)を書いた吉田幸弘氏は「チームを生かし育てるスキルはパフォーマンスを高める効果が大きく、転職にも有利」と述べ、新リーダーの必須条件と説く。「いい上司、悪い上司」のパターンや、進化型上司への脱皮方法を聞いた。

■3度の降格人事から学んだチーム運営

吉田氏は3度の降格人事という、苦い経験を持つという。学校法人や外資系企業でリーダーに抜てきされたものの、生来の怒りっぽさからチームをまとめきれなかった。その後、「部下を承認するマネジメント」をつかんで、チームの業績を劇的に向上させる成功も味わった。「降格した当時はいつもイライラして、部下との接し方も、とげとげしくなってしまいがちだった」と振り返る。かつてはチームをぐいぐい引っ張っていくリーダー像を自らに求めたが、「そもそもリーダー像に思い込みがあった」という。

リーダー像の変わり目にあって、戸惑う部長や課長が増えているようだ。自分たちはカリスマ型のリーダーに引っ張られて成長してきた体験を持つのに、今の部下は強権的な振る舞いを嫌う。背中を見て育った先輩のやり方は通用しなくなった。「終身雇用の約束が消えつつあるなか、年功序列に乗っかった管理は効き目がない。そもそも強いリーダーシップ自体を、若い層は嫌いがち」と、吉田氏はみる。

部下から嫌われる上司の典型例が「威張る上司」だろう。権限を振りかざす上司がパワーを見せ付けるために選ぶ行動が「部下提案のブロック」だ。中身がよくても、理由を明示せずに「もう少し検討して」と突っ返す。意欲的な取り組みに「俺は事前に聞いていない」と、水を差す。小さなプライドを守ろうとする「ボスアピール」だ。吉田氏は「偉く見せたいだけのポーズは無意味。かえって軽んじられてしまい、立場が空洞化しかねない」と警告する。

部下と協調しながら働くには、思い切って仕事を任せる決断が欠かせないと、吉田氏は説く。ただ、ここでも余計なプライドが邪魔をする。仕事を手放してしまえば、部下の立場が強まり、ますます自分は立場を悪くするという心配が業務の抱え込みを招く。「任せてもこなせない」と勝手に決めつける上司もいる。だが、「今の部下層は正直言って、上司より優秀な場合が珍しくない。大抵の仕事はこなせるから、時折、進行をチェックするだけで構わない」(吉田氏)。

■「サーバント型」リーダーとは

チームを動かすのは、立派なマネジメントスキルだ。上司が身につけておくべきリーダー技能といえる。もし、自分の仕事を部下に分け与えず、むやみに抱え込んでしまうと、この「分かち合いスキル」を養う機会を逃す。つまり、リーダーが自らの成長を殺すことになりかねない。吉田氏は「転職や異動も含め、様々なチームで働くことが増えている今、仕事の分かち合いを通したチームマネジメントができないとリーダー資質を問われる」とみる。

新しいリーダー像として近ごろ広まってきたのが、「サーバント型」と呼ばれるものだ。「召使」という意味の英語が示す通り、チームに奉仕し、仲間を支えるような動き方に特徴がある。米国のロバート・グリーンリーフ博士が提唱した概念だ。著書が出たのは1970年代だから、新興の考え方ではない。「チームのメンバー構成が変わり、働く人の目的意識も変化して、日本でも手本にしやすくなってきた」(吉田氏)

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