■男のしぐさはかっこいい。それを阻害するのがクールビズ
――日本中の職場でクールビズが始まりました。
「一番気に入らないのがクールビズだ。キタムラではクールビズはまかりならん。客としてお出かけする立場ならばフリー(自由なスタイル)でいいけれど、客を接待するときはルールを守ってくれ、というのが僕の思い。無理してでもやらなくてはいけないですよね。だいたい政治家のクールビズもひどくて見ていられないでしょう」
「ネクタイをするときに襟をたてて、最後にこう締める。暑くて息苦しいとこう緩める。こんな男のしぐさってかっこいいものなんですよ。それを阻害するのがクールビズ。男性の魅力を消滅させています」
――百貨店ではクールビズ商戦まっただ中ですが。
「ファッションリーダーの百貨店がプライドを捨ててどうするの。クールビズ関連商品ですてきな商品がありますか? そもそも、かっこいい夏向けの長袖シャツが提案できているの? 僕は百貨店が好きだからあえて言うけれど、オーセンティックなスピリットを持つ経営者が今の百貨店には少ないんですよ」
――北村社長は団塊の世代。男のスタイルはこうあるべきだというセオリーの洗練を受けた世代です。若い世代はハウツーを知る機会が少ないのではないでしょうか。
「僕は今72歳だけど、若い時にVAN(ヴァンヂャケット)で『こうあらねばならぬ』というTPOを教え込まれ、アメリカのスタイルをどう着こなすか、自分なりに考えたものです。でも今は情報がたくさんあるのに勉強していない人が多いですね。だって、テレビドラマを見ていたら主人公の刑事が着ている3つボタンスーツのボタンの留め方が間違っている。最近のスタイリストはプロではないよね。政治家では座ったときにボタンを外さない人がいる。基本的なルールすら知らないのでしょう。タキシードにはオペラシューズを合わせるはずなのに、革靴を履いてしまう。こんな中途半端な形で日本が劣化しているわけです」