男性の育休、取得義務化ってどうなの 専門家の意見は

反対派も男性の育休取得に反対はしていない。企業や職場、社会の現状をみると、義務化は現実的な解決策ではないとの立場だ。

厚生労働省「雇用保険事業年報」によると、2017年度の育児休業取得者(給付金初回受給者)は計34万3千人。男性は僅か1万4千人だ。年間出生数は90万人超。もし育休を義務付けたら、ほぼ同数の男性社員が日本の職場から1カ月抜ける可能性がある。

大企業なら業務の分担もしやすいが、人手不足が深刻な中小企業は負担増に堪えられない。法政大の武石恵美子教授(人的資源管理論)は「夫婦がそれぞれ育児を分担できるように、短時間勤務や残業免除などを利用しやすくする方が現実的だ」と指摘する。

労働政策研究・研修機構の池田心豪主任研究員も、短時間勤務など本人が状況に応じ選べるのが大事だと考える。「強制的に休業させると、収入が減る『所得ロス』と、将来につながる仕事のチャンスを失う『キャリアロス』につながる」

育休期間中は原則給与はゼロ。雇用保険から休業給付金が支払われるものの、給付金は休業前賃金の66%が上限だ。中京大の松田茂樹教授(社会学)は「日本の大半の夫婦は男性が主たる稼ぎ手。育休を男性に義務付けたら、子育て家庭の生計は苦しくなる。義務化が少子化対策として有効とは思えない」と指摘する。

20年前から子育て拠点を運営するNPO法人新座子育てネットワークの坂本純子代表理事は「男性の多くは家事・育児、生活能力が総じて低い。言葉の通じない赤ちゃんに理詰めの傾向がある男性が向き合うと、思い通りにいかないいらだちが最悪、子どもに向かう恐れがある」と反対する。

休業期間の短さ課題

男性社員を子育てにかかわらせるために、先進企業は策を練る。日本生命保険は2013年度から「男性の育休100%取得」を宣言し、6年連続達成中。積水ハウスと三菱UFJ銀行は1カ月以上の育休取得を男性とその上司に強く促す。

取得に消極的だった男性社員が家事・育児に積極的になるなど効果もうかがえる。「早く帰宅できるように、業務効率を改善するようになった」など仕事へのプラス影響もあるという。

課題は取得期間だ。日生は取得者が計1600人に上るが、休業は平均約1週間。積水ハウスも1週間~10日程度に分割して取得するケースが目立つ。代替要員が確保できず、長期間担当を外れられないからだ。

コカ・コーラ ボトラーズジャパン(東京・港)は今年から、子どもが生まれたすべての男性社員にエプロンを贈っている。イクメンの自覚を促す狙いだ。営業職の森山翔馬さんは(28)離乳食を与えるときなどに自宅で着用している。「エプロンをもらい、妻の負担を減らすよう意識するようになった。着ると息子も食事時間だと分かるようで最高の笑顔を返してくれる」

夕飯前に「パパエプロン」を着けて息子をあやす森山さん(福岡市東区)

エプロンは直属の上司がオープンな場で直接手渡す。職場全体に家事・育児参画を柔らかく意識付けるためだ。「強制するだけでは変わらない。自然とサポートする職場に変えていきたい」(ダイバーシティ推進課)

なぜ必要か 議論を ~取材を終えて~

議連立ち上げは夏の参議院選挙に向けた人気取りだとする冷めた見方もある。ただそれぞれの思惑は別として、女性活躍を進めるには本気で男性の家庭活躍を考えなければいけないステージに来ている。

米国も同じ道を歩んだ。共働き社会に切り替わった1980年代、女性は仕事と家事・育児を二重負担していた。米国社会学者のアーリー・ホックシールド氏は当時の米国女性の状況を「セカンド・シフト」と表現した。1日に勤務先と家庭の2つの労働シフトに入っているようだったからだ。ここから社会と家庭を改変し、女性活躍先進国に進化した。

リクルートワークス研究所の大嶋寧子主任研究員は「男性の育児参加は日本経済や社会の持続性にかかわる問題だという認識がまだ薄い。男性の育休義務化を目的にしてはいけない」と強調する。男性の家庭活躍がなぜ必要でどうすれば実現するのか。積極的に取り上げていきたい。