世界を20分駆け巡った謎の地震 ついに原因が解明

日経ナショナル ジオグラフィック社

大西洋のホットスポットの可能性

2019年5月16日、フランスの共同声明発表に合わせて、調査に関わっていたパリ地球物理学研究所のロビン・ラカシン氏は、ツイッターに2枚の画像を投稿した[注]。そのうち1枚は、新しく誕生した火山のエコー画像だった。エコー画像は、イルカが周囲の環境を音波で探知するのと似た仕組みにより得られる。

[注]ツイートはhttps://twitter.com/RLacassin/status/1129065778752512002で見られる

「妊婦が受ける超音波検査と同じようなものです。ただこちらのほうが、もっと大まかなだけです」と地球物理学者のルシル・ブルハット氏はツイッターで説明した。なお、ブルハット氏は研究チームの一員ではない。

画像には、円錐状の海底火山からうねるように立ち上る噴煙のようなものが写っている。その高さは2000メートルほど。これが何でできているかはわからないが、音波が跳ね返る様子から、陸上の火山から噴出する火山灰のようなものだろうと、英グラスゴー大学応用火山学の博士候補生ヘレン・ロビンソン氏はメールで意見を述べた。だが、画像から読み取れる海水の温度と密度の違いから、熱水噴出孔から噴き出る熱水のように、単にミネラル成分の多い熱水かもしれない、とクロフォード氏は付け加える。

火山は明らかに新しいが、どの程度新しいかはわからない。2015年につくられた海底地形図に、この火山は存在しない。クロフォード氏によれば、2018年5月より前には、火山は存在していなかったと調査チームはみている。マヨット島が沈みつつ東に移動し始めた、2018年の夏にでき始めた可能性もあるという。

「確かな事実は、2015年には何もなくて、いまはある、ということです」とクロフォード氏。

もう1枚の画像は、マヨット島の東にあるパマンジ(プティ・テール)島から5~15キロ沖の震源地と、50キロ沖の新しい海底火山を示している。震源地と海底火山の間には、突起物がいくつも並んでいる。また、新しい火山ができた周辺には、尾根や隆起がたくさんあり、かなり以前に噴火が起きていた可能性もある、とクロフォード氏は言う。

調査船マリオン・デュフレーネ号による最新の調査で得られた画像。マヨット本島の東にあるパマンジ(プティ・テール)島から5~15キロ沖の、点線で囲まれた円が群発地震の震源地。画面下の矢印の先が新しい海底火山で、マヨット島からの距離は約50キロ。震源地から新しい火山の間には、何らかの物体がいくつも並んでいる(ILLUSTRATION BY INSTITUT DE PHYSIQUE DU GLOBE DE PARIS)

「火山の中心部が島から徐々に離れていったのかもしれません」とヒックス氏は言うが、そのメカニズムを知るにはさらに多くのデータが必要だとしている。

これらの特徴がおそらく火山性であることは、クロフォード氏も認める。そして、新たな地震のデータを含めて解析すると、興味深いパターンが現れるという。群発地震の震源地が3つあるというのだ。1つは新しい火山の下。もう1つは最も新しい震源地で、島のおよそ10キロ沖。そして3つめはその中間だ。しかし3カ所の関連についてはまだわからない。

米ハワイ大学マノア校の火山学者で、海底での噴火を専門とするケン・ルービン氏は、ハワイ島のキラウエア火山の南で成長しているロイヒ海底火山といくつかの共通点があると話す。

ハワイの島々は、ホットスポットと呼ばれるタイプの火山活動によってできた。それぞれの島は、マントルの中を上昇してきたマグマが噴き出して形成された。マントルの上のプレートが移動すると噴き出し口が移動し、ずっと同じ場所に新しい島が次々と誕生する。これが繰り返され、島が鎖のように連なるというわけだ。