華麗なジャンプに空中キック ヘビの襲撃にネズミ反撃
米国アリゾナ州の砂漠に暮らすモフモフのカンガルーネズミ。このネズミにとって、晩ご飯を探すことは、地雷原を歩き回るのと同じだ。というのも、砂の中にヨコバイガラガラヘビが身を潜めていて、ネズミが近づくのを待っているからだ。しかし、カンガルーネズミは、考えられているほど無力でないことが研究でわかった。動画でご覧いただこう。
2019年3月27日付けで学術誌「Biological Journal of the Linnean Society」および「Functional Ecology」に掲載された2本の新たな論文によれば、カンガルーネズミは、ヨコバイガラガラヘビからの攻撃を0.1秒かそれ以下のレベルで察知し、強力な後ろ脚でジャンプして逃れる。
しかも、ヘビに噛まれても、毒を注入される前に相手を蹴飛ばして、脱出に成功することもある。空中で回転しながら空手キックをかますカンガルーネズミは、まるで小さな忍者のようだ。
「カンガルーネズミの素晴らしい平衡感覚のおかげです」と話すのは、論文の著者で、米サンディエゴ州立大学の行動生態学者ルーロン・クラーク氏。
クラーク氏の調査チームは、この行動を何年にもわたって調べてきた。そしてついに、スローモーションカメラ技術の向上によって、知られざる砂漠の決闘の詳細を明らかにした。
カンガルーネズミのジャンプは、単に驚いて適当に飛び上がるだけではない。そこが、他の多くの獲物と異なる点だという。
「複雑で、優雅と言ってもいいでしょう」とクラーク氏。「ジャンプと回転とキックを組み合わせたバレエのような動きです」
さらに注目すべきなは、ヨコバイガラガラヘビの狩りが失敗に終わる多さだ。
クラーク氏らは幾夜も砂漠で過ごした結果、13匹のヨコバイガラガラヘビによる攻撃を32回ビデオに収めることに成功した。驚くことに、ヘビが実際にカンガルーネズミに噛みついた回数は半分に満たず(15回)、毒を注入しネズミを食べることができたのは、そのうちわずか7回だった。残りの8回は、カンガルーネズミは空中でヘビに蹴りを入れ、逃げおおせた。
カンガルーネズミがヘビに噛まれずに済んだ17回のうち、噛みつかれる前に跳んで攻撃を避けたのが11回、またヘビがカンガルーネズミとの距離の目測を誤って攻撃を外したのが6回もあった。
たとえヘビの狙いが正確でも、カンガルーネズミが素早くヘビの顔を蹴りつければ、攻撃を無力化できるだろう。
(日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック 2019年4月9日付記事を再構成]
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