直木賞より売れる「新井賞」 書店員一人で勝手に選考書店員 新井見枝香さん

三省堂書店の社員時代に、蔦屋書店で新井賞のコーナーが組まれた。会社の垣根を越えた広がり

予想外だったのは、他社への影響だ。蔦屋書店が新井賞のコーナーを展開するなど大手チェーンも食い付いた。知名度がさらに高まり、新井氏がいる書店での売り上げも上昇したという。新井賞を始めたことで、作家と直接話す機会も増えた。そこで、作家のパーソナリティを知ってもらい、ファンになってもらうためのトークイベント「新井ナイト」も企画。自ら聞き手を務めている。

書店員としての新井氏の棚づくりの鉄則は、「売れる本と売りたい本を半々に配置すること」。売れる本がそばにあれば、売りたい本も見てもらえる。目指すのは「買いたくなる雰囲気がある棚」だ。

5月からは、「女性のための本屋」HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGEに転職。さらに自由な棚を展開することだろう。意表を突くやり方で令和の活字離れを防ぐ人が、ここにいる。

ヒットをつくる人の素顔
Q 仕事の参考にしている情報源は?
A 書店にばかり行かない。書店以外から情報を仕入れないと世間に追い付けない。普段書店に来ない人を呼び込むためにも、SNSなどで趣味の情報を集める。

Q 最近読んで印象に残った本は?
『逃げ出せなかった君へ』(KADOKAWA)。連作短編のなかで、自らの名誉を犠牲にしても生徒を救おうとする女性教師の話が刺さった。
新井見枝香
1980年、東京生まれ。アルバイトから、契約社員を経て、三省堂書店の正社員となる。独自に設立した文学賞「新井賞」は、芥川賞・直木賞と同日に発表。自らもエッセイを3冊上梓している。5月からHMV&BOOKS HIBIYA COTTAGEに勤務する。

(山口佳奈)

[日経トレンディ 2019年6月号の記事を再構成]

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