バツイチ彼と結婚なら要チェック 生活資金の落とし穴

人生100年時代を生き抜く働く女性世代。シングルならではのお金の悩みや、病気、突然の退職など「クライシス」への備え方・乗り越え方を、ファイナンシャルプランナー(FP)の前野彩さんが伝授します。今回のテーマは、結婚の損得勘定。結婚はとても喜ばしいものですが、思いもよらないお金のトラップがあることも。これから結婚する彼が再婚の場合にチェックしたいことを教えてくれました。
「バツ」付きの男性との結婚で、絶対押さえる重要情報
40代、50代の恋愛ともなれば、片方が、あるいは双方とも離婚経験者というケースもあります。交際相手に離婚歴がある場合、「もしかして結婚?」と感じたら、ロマンチックな気持ちに浸りつつも、確認しておきたいことがあります。彼が年齢も給与も高い男性だったら、なおさらです。
結婚を意識している相手に対してなら、彼は、前妻と別れた時の財産分与や慰謝料、養育費について話しているかもしれません。
財産分与は過去の情報なので、情報としてキープしておけばOKです。慰謝料、養育費については今から未来にかけて出ていくお金なので、いつまで、いくら払っていくことになるのかを、押さえておくことが重要です。
でも、本人もすっかり忘れているかもしれない大きな盲点があります。
その大きな盲点が「年金分割」です。
「月額約3万、年約36万円」の年金分割は一生ついてくる?
年金分割(厚生年金の合意分割)とは、離婚をした際に結婚していた期間中の厚生年金記録を分割(最大1/2)できる制度です。当事者の一方から請求でき、請求できる期間は原則、離婚の翌日から2年間です。
もしあなたの彼が、「給料が高い」、「前妻との結婚期間が長い」、さらに「前妻が専業主婦」で、離婚の時に「年金分割」をしていたとしたら……その影響は、彼の老後の年金額に、ひいては結婚後のあなたの老後の生活に影響してきます。
誤解されやすいのですが、年金分割されるのは厚生年金部分のみ。国民年金部分については、分割されることはありません。金額は人によってばらつきがありますが、平均額では、1カ月当たり約3万円、年間約36万円が分割されています(平成29年度厚生年金保険・国民年金事業の概況より)。
公的年金は亡くなるまで受給できる終身年金ですが、一度分割された金額は一生変わりません。分割を受ける側(前妻)が亡くなっても、分割された側(彼)の年金額が戻ることはないのです。そして、元妻が元夫から受け取った分割された年金は、将来、元妻が再婚しても自分の年金として一生受け取ることができます。
将来の年金目安額は、毎年届く「ねんきん定期便」で分かります。彼と親しくなり、家を買うなど将来の話をしていれば、もしかしたら「ねんきん定期便」を見る機会もあるかもしれませんが、ここにも盲点があります。

ただし、時効はアリ。前妻が「請求しない」ことを祈るのみ
彼が50歳以上の場合は、「ねんきん定期便」には分割後の年金目安額が載っているので、老後のプランは立てやすくなります。
でも、彼が50歳未満の場合は、「ねんきん定期便」には年金分割が考慮されていない金額が記入されています。この場合、「年金分割をしたかどうか」は、本人から聞きださなければなりません。
彼が前妻と年金分割をしていたら、それは仕方ないことであり、前妻にとっては当然の権利です。そのときは、年金額が減ることを覚悟し、彼と一緒にその分を備えましょう。
なお、もしも彼が年金分割をしておらず、離婚後2年を経過していないのなら、前妻が時効までに年金分割を請求しないことを祈るしかありません。
恋愛中に前妻の話をするのは、お互いエネルギーのいることです。離婚の話を聞くことすら失礼だと感じたり、お金の話をすることに抵抗を感じたりする人もいらっしゃるでしょう。しかし離婚経験のある男性と今後の人生を考えたとき、前妻を完全にシャットアウトすることは不可能です。
心の面でもお金の面でも、「前妻の影」について、彼と一度話し合いをしておきましょう。
バツイチ婚は、前妻への慰謝料・養育費のチェックだけでは甘い!
離婚時の年金分割もしっかりチェック!

(取材・文 阿部祐子)
[日経ARIA2019年2月18日付の掲載記事を基に再構成]
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